涙の分泌量が減ったり、涙の質が低下することで、目の不快感や視力低下などの異常が生じる「ドライアイ」。パソコンやスマホの普及などにより、近年は増加傾向にあるといわれています。さらにテレワークの普及でパソコンに向かう時間が増えたことも、増加の一因になっています。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方では、目を五臓の肝と関係が深い器官として捉えています。漢方薬を用いて、肝の血(けつ)や津液を補うことにより、ドライアイの治療を進めます」と話します。
「目がごろごろして気になるので眼科を受診したところ、ドライアイと診断されました。このところ抜け毛も増えており、年齢を感じます」

Aさんはまだ老眼ではないようですが、ときどき目がかすみます。月経の量も若い頃よりずいぶん少なくなりました。舌は白く、白い舌苔が付着しています。
ドライアイは、涙の分泌量が減ったり、涙の質が低下したりすることにより、目の表面の潤いが低下したり、目の表面が滑らかでなくなったりして、目の不快感や視力低下など視機能の異常が生じる疾患です。
ドライアイは、パソコンやスマホの普及などにより、年々増加傾向にあるといわれています。パソコンやスマホのモニターを見続ける時間が増えたり、まばたきの回数が減ったりすることにより、ドライアイは悪化していきます。コンタクトレンズの装用や、エアコンの使用、長時間の運転、加齢、夜更かしや睡眠不足、たばこの煙、シェーグレン症候群などの疾患、ある種の薬の副作用によっても悪化します。
最近ではテレワークの普及でパソコンに向かう時間が増え、それに伴いドライアイの患者さんも増えています。
症状としては、涙の分泌量が減ることにより、目が乾燥します。また涙の質が低下して目の表面が滑らかでなくなり凸凹することにより、目がごろごろする異物感、目の痛み、まぶしさが生じます。さらに涙による目への栄養供給が不十分になると、目のかすみ、目の疲れ、視力低下などが起こります。
目の表面は、目の粘膜の上を涙の成分である水分や粘液性の物質(ムチン)がおおい、さらにその外側を脂層がおおっています。西洋医学では、涙に近い成分で潤いを持たせたり粘膜を保護したり保水したりする点眼薬を使い、症状を緩和させます。目頭にある涙の排出口をシリコンなどでふさぐ治療法もあります。
ドライアイと関係が深いのは、五臓の肝
中医学では「肝(かん)は目に開竅(かいきょう)する」といい、目を五臓の肝と関係が深い器官として捉えています。肝は五臓のひとつで、からだの諸機能を調節し、情緒を安定させる働き(疏泄:そせつ)を持ちます。自律神経系と関係が深い臓腑です。開竅とは、五臓の機能が反映されやすい器官のことを指します。目のことを肝竅(かんきょう)ともいいます。
さらに「涙は肝液である」ともいい、涙は眼を潤し、目に開竅する肝と深い関係にある津液(しんえき)と捉えています。津液とは、人体の正常な生理活動に必要な水液のことです。
したがって漢方では、おもに肝の血(けつ)や津液を補うことにより、ドライアイの治療をします。血は、全身を滋養する作用、およびその物質的基礎のことです。血液や、血液が運ぶ栄養、あるいは循環に近い概念です。