更年期というと「女性特有のもの」と思われがちですが、男性も加齢とともに性ホルモンの分泌量が減り、集中力や意欲の低下、不眠、不安、いらいら、疲労倦怠感、ほてりなどの症状がみられることがあります。これが男性更年期障害です。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「西洋医学の治療では男性ホルモンの一種であるテストステロンの投与などが行われます。漢方では、五臓の腎、心が深い疾患と捉えています。漢方薬でこれらの機能を調え、治療していきます」と話します。
「仕事でつまずいた頃から、夜中に何度も目が覚めるようになりました。心療内科を受診したところ、うつ病と診断され、しばらく抗うつ薬を服用しましたが、効果はありませんでした」

Aさんはずっと過労が続いていました。寝つきがわるく、朝早く目が覚めます。夢をよく見ます。その頃から不安感が強く、驚きやすくなりました。別の医院を受診し、男性更年期障害と診断されました。舌は白っぽい色をしています。
男性も女性と同様、加齢とともに性ホルモンの分泌量が減り、精神的、肉体的な症状が表れることがあります。これが男性更年期障害です。加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群とも呼ばれます。
男性の場合は女性と違い、性ホルモンの減り方が穏やかな関係もあり、大きな体調の崩れを感じる人は女性ほど多くはありません。しかし、その体調不良が性ホルモン分泌量の減少と関わっていることに気づかず、すぐれない体調のまま悶々と過ごす人が多いのが特徴です。
よくみられる症状は、集中力や意欲の低下、不眠、抑鬱状態、不安、いらいらなどの精神的な症状や、疲労倦怠感、ほてり、発汗、性機能の低下、筋力の低下などの肉体的な症状です。
男性更年期障害(LOH症候群)と関係が深いのは、五臓の腎や心
男性更年期障害は男性ホルモンの低下と関係が深いということから、西洋医学では男性ホルモンの一種であるテストステロンの投与などが行われます。
漢方では、男性更年期障害はおもに五臓の腎(じん)と関係が深い疾患と捉えています。腎は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、ならびに水液や骨をつかさどる臓腑です。したがって男性の性機能や男性ホルモン量は、腎の状態に大きく左右されます。
腎の機能(腎気)は、年齢とともに弱まります。これは自然なことです。しかし腎気が安定していれば、更年期の性ホルモン分泌量の減少による体調の悪化を感じずに過ごすことができます。
男性更年期障害は、五臓の心(しん)とも深い関係にあります。心は五臓のひとつで、心臓を含めた血液循環系(血脈)と、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動(神志:しんし)をつかさどります。この心に、加齢や過労が続くことで負担がかかると、神志が不安定になり、不眠、不安、健忘、抑うつ状態などが生じ、男性更年期障害になります。
漢方では、これら五臓の腎や心の機能を調えるなどして、男性更年期障害を治療していきます。
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