更年期障害の主な原因は、加齢に伴う性ホルモン量の減少です。特に女性は急激に減少するため、不調がはっきりと現れやすいといいます。「漢方では、加齢によって五臓の『腎』『肝』『心』が複合的に乱れ、イライラやほてり、頭痛などの不調を招くと考えます。どんな症状が現れているかをしっかり見極め、適した漢方を選んでいきましょう」と幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは話します。
「2年ほど前から更年期症状に悩まされています。特につらいのは、イライラです。わけもなくイライラしたり、怒りっぽくなったりします。イライラしていることに気が付くとかえって憂うつな気分になります。自分の感情をコントロールできなくて、落ち込んでしまいます」
Aさんは、不安にかられて動悸がしたり、ホットフラッシュ(*1)が少しあることも話してくれました。胃腸の調子もあまりよくないようで、便秘と下痢を繰り返しているようです。頭痛や肩こりもひどく、マッサージに行っても、そのときに少し楽になるだけで、またすぐ元の状態に戻ってしまうとのこと。舌は赤く、黄色い舌苔(ぜったい)が付着しています。
*1 ホットフラッシュとは場面に関係なく、急に顔がほてったり、のぼせた状態になったり、多量に汗をかいたりすること。
「更年期障害」は、女性の場合、閉経年齢の50歳前後を中心に、45歳から55歳くらいまでの期間に現れるさまざまな精神的、肉体的な症状のことです。この期間は個人差が大きく、早ければ30代で現れる人もいます。
更年期障害の主な原因は、女性ホルモンの分泌量の減少です。卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量は、妊娠適齢期の20~30代をピークに、40代後半から急激に減少します。加齢による減少ですので自然なことではありますが、その変化に体がついていけず、つらい思いをしながら更年期を過ごす人は少なくありません。
ホルモン量の減少に加え、自律神経系のバランスの乱れや、循環器系、消化器系、泌尿器系、皮膚や筋肉の機能低下も同時に進行しています。メンタル面でも、家庭内のストレスや老後の不安も高まる年齢です。
更年期に起こる不調を、不足したホルモンを補充するだけでやり過ごすのではなく、ホルモン以外の要因も広く考慮に入れ、体全体の調子をととのえて更年期障害に対処していくのが、漢方の特徴です。
今回は女性の更年期障害について解説します。若年性の更年期障害や、男性の更年期障害については、別の機会に解説します。
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