かぜをひいたわけでもないのに、顔がのぼせたり、からだ全体がほてったりと「熱感」が生じることがあります。緊張したときなどに一時的にほてるのは自然なことですが、慢性的に続くと辛いものです。このような症状は、病気になりかけている状態、「未病(みびょう)」の可能性があります。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方では、病気になる前に先手を打って病気の芽をつんでいきます。これにより発病や病気の悪化を防いでいきます」と話します。
「仕事が忙しく、慢性的な疲労が何年も続いています。からだがだるく、体調もかんばしくなく、とくに手足が熱くほてり、不快です」
Aさんは、冬でも手のひらと足の裏がほてり、夜は布団から手足を出して寝ています。一年じゅう寝汗をかきます。過労のせいか、めまいや耳鳴りがあります。舌は暗紅色で乾燥しており、舌苔はほとんど付着していません。

顔や首などの上半身がのぼせたり、手のひらや足の裏がほてったり、あるいは夕方から体全体がほてったりと、かぜをひいたわけでもないのに熱感が生じることがあります。緊張したときに顔がほてるような一時的な症状なら誰しもが経験する一般的なことですが、不快な熱感が慢性的に繰り返すようなら、なんとか改善したいものです。
このような不快な自覚症状は、病気とはいえないまでも、病気になりかけている状態かもしれません。このような状態を未病(みびょう)といいます。
体内のさまざまなバランスが少し崩れると、体質が少し悪化し、健康な状態から未病の状態になります。漢方では、この未病の段階、つまり病気になってしまう前に手を打つことが、すぐれた治療だと考えています。前漢時代に編纂された中国最古の医書『黄帝内経(こうていだいけい)』に載る概念です。
一般に西洋医学では、体調がわるくても検査の結果、異常がなければ治療は行われません。しかし検査の結果として数字や画像で顕在化してこなくとも、不調や不快な症状があるかぎり、そこには必ず体内のバランスの失調があると考えられます。漢方は、その段階から治療を進めることができるのです。
放っておけば病気になる、その前に先手を打って病気の芽をつむ。未病の段階でも治療を始め、発病を防ぐ、あるいは悪化を防ぐ、という視点が漢方治療にはあります。
今回の不快な熱感にも、慢性的な病気や体調不良が陰に隠れているかもしれません。未病のうちに手を打つことを検討しましょう。