脂質異常症は、血中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が基準値から外れた状態で、中高年齢層に多い代表的な生活習慣病です。自覚症状がないため放置しがちですが、動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まります。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方では、脂質異常症を痰飲や湿邪と関連が深い疾患と捉えています。漢方薬でそれらを除去することにより、脂質異常症を治療します」と話します。
「会社での健康診断の結果、悪玉コレステロール値が高いことがわかり、脂質異常症と診断されました」

Aさんは悪玉(LDL)コレステロールが162mg/dlあり、基準値を超えていました。中性脂肪や善玉(HDL)コレステロールは基準範囲内でした。体調としては、痰が多く、よく吐き気を催します。寝つきがわるく、朝は早めに目が覚めます。いらいらしやすくなりました。舌には黄色い舌苔がべっとりと付着しています。
脂質異常症とは、血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)などの脂質が基準を逸脱している状態のことです。以前は、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる状態が危険視されていたので「高脂血症」と呼ばれていました。しかし善玉(HDL)コレステロールが少なすぎても危険なため、まとめて「脂質異常症」と呼ばれるようになりました。
コレステロールは、体内で細胞膜やホルモンの材料となる重要なものですが、量が増えすぎると血液がどろどろの状態となり、血管壁がもろくなります。中性脂肪は、糖質とともに我々のエネルギー源となる重要なものですが、多すぎると内臓周辺や皮下に蓄えられ、肥満になります。
脂質異常症になっても自覚症状はほとんどありませんが、余分な脂質が血液中で増えることにより、動脈硬化を起こしやすくなります。
脂質異常症の原因となるのは、おもに暴飲暴食などの食生活です。とくに肉類や乳製品などの動物性脂肪や、魚卵や鶏卵などのコレステロールを多く含む食品、あるいは甘いものなどカロリーが高い食品を多く食べる習慣があると、脂質異常症になるリスクが高まります。運動不足やストレス、喫煙も関係します。遺伝性の家族性高コレステロール血症もあります。
西洋医学では、肝臓でコレステロールの合成を抑えてLDLコレステロールを低下させるHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)などの薬が使われます。