人前で話をするときや、初対面の人と会うときは、誰でも緊張します。それ自体は自然なことですが、日常的に緊張状態が続くと、さまざまな悪影響が出てきます。このような緊張状態は、一般には病気とはいえませんが、辛い症状がでることがあります。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方では『緊張体質』そのものを改善していきます。体調を崩すことが減り、将来病気になる可能性も少なくなります」と話します。
「接客業をしていますが、緊張しやすく、とくにお客さんがいらいらしたり、怒ったり、大きな声を出したりすると、どきどきして、手がふるえてしまいます」

Aさんはもともと疲れやすく、あまり体力や根性がないほうだったそうです。顔色につやがなく、生理不順で生理が遅れがちです。ときどき立ちくらみがあります。舌は赤く、舌苔は薄くて乾燥しています。
人前で話をするときや、初対面の人と会うときには、誰でも緊張するものです。緊張すること自体はごく自然なことであり、病気でも何でもありません。
しかし緊張する状況が日常的に繰り返されたり、緊張の度合いそのものが強かったりすると、寝付きがわるい、胸苦しい、動悸(どうき)、肩こり、頭痛、のどのつかえ感、のぼせ、冷え、暑くもないのに汗が出る、ふるえ、口の中がねばねばする、過度のいらいらや不安感…といった症候が出現することがあります。また、自分は緊張しやすいという思い込みがあるために、緊張する場面が近づくと思うだけで動悸などの症状があらわれる場合もあります。
このような「過度の緊張」(過緊張)を西洋医学では、自律神経系のバランスが崩れて交感神経が優位な状態が必要以上に長く続いている状態だととらえています。活動や攻撃に向けてからだを調整する交感神経が必要以上に亢進している状態です。
本来ならば心身をリラックスさせたい夜間や休息時にまで、昼間や仕事中の緊張を引きずってしまい、過度の緊張が生じるというケースも少なくありません。寝ているあいだも過度の緊張が続くと、「ちょっとした物音で目が覚める」「朝起きたときから肩やからだ全体がこっている」などの症状が生じます。毎朝、目覚まし時計が鳴る前に目が覚めてしまうという人もいます。睡眠中に歯の食いしばりや歯ぎしりをしている人も多いでしょう。副交感神経が優位となっているべき時間帯にもかかわらず、交感神経が強く働いている状態といえます。
このような過緊張の状態は、病気とはいえないまでも、つらい症状があるため、漢方薬を飲む、という人は少なくありません。放っておくと、自律神経失調症、高血圧症、不安神経症、不眠症、うつ病、総合失調症、動脈硬化、不整脈、甲状腺腫、更年期障害、慢性頭痛(緊張型頭痛)などの病気になる可能性もあります。漢方薬で「緊張体質」そのものを改善しておけば、過度の緊張で体調を崩すことが減り、将来病気になる可能性も少なくなります。