甲状腺の病気の1つ「バセドウ病」は、甲状腺の働きが活発になりすぎ、甲状腺ホルモンが過剰に作られるようになる病気です。西洋医学では抗甲状腺薬で甲状腺ホルモン量をコントロールする治療法や放射性ヨウ素治療などで対処します。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方では、バセドウ病と関係が深い『気・血・津液』の流れを潤滑にすることにより、バセドウ病の体質的な根本治療を進めます」と話します。
「バセドウ病です。からだが熱く、汗をたくさんかきます」

Aさんは、感情の起伏が激しく、驚きやすく、興奮しやすいほうです。そのせいもあり、寝つきがよくありません。舌は紅く、黄色い舌苔が付着しています。
バセドウ病は、甲状腺の病気です。新陳代謝を盛んにするホルモン(甲状腺ホルモン)が過剰に作られる病態(甲状腺機能亢進症)の代表的なものです。バセドウは、この病気を研究発表したドイツ人医師の名前です。橋本病と同様に女性に多い、自己免疫疾患のひとつです。
甲状腺は、甲状腺ホルモンを作る臓器(内分泌器官)で、首の前の部分、のど仏のすぐ下の、唾を飲み込むときに動くあたりにあります。
甲状腺ホルモンの量は、視床下部がコントロールしています。血液中の甲状腺ホルモン量が足りないと、下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)を分泌して甲状腺の活動を活発にし、甲状腺ホルモン量を増やします。逆に甲状腺ホルモン量が多すぎると、TSH分泌量を減らして甲状腺の活動を抑え、甲状腺ホルモン量を減らします。これらの機能が失調して甲状腺の働きが活発になりすぎ、甲状腺ホルモンが過剰に作られるようになったのが、バセドウ病です。
バセドウ病になると、甲状腺が腫れますので(甲状腺腫)、首が太くなったようにみえます。そして新陳代謝が必要以上に活発になり、おとなしくしているときでも必要以上にエネルギーを消費する状態となります。それは、じっとしているときでも走っているときと同じようなからだの状態です。そして甲状腺機能亢進症特有の症状が表れます。
まず、いつも走り続けているような状態なので、疲れやすくなります。また、そのために多くの酸素が必要となるため、動悸、息切れが生じます。当然、暑がりで、汗をかきやすくなります。手指の震えも生じます。精神的にも、いらいらしやすく、興奮しやすく、眠りにくくなります。エネルギー消費が多いので、食欲があるのに痩せることもよくあります。高血圧、高血糖、かゆみ、月経期間の短縮、経血の減少などの症候も生じます。バセドウ病の特徴のひとつとされる眼球突出は、5人に1人くらいの割合でみられます。
西洋医学的には、甲状腺ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬(メルカゾール、チウラジールなど)で甲状腺ホルモン量をコントロールする方法や、甲状腺の細胞を放射線で減らす放射性ヨウ素治療(アイソトープ)、甲状腺を外科的に切除する手術などの方法で治療にあたります。
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