「にきび」というと、思春期の若者にできるイメージがありますが、20代以降の大人になっても、にきびで悩む人は少なくありません。西洋医学では、抗生物質などで炎症を抑え、にきびを治療します。これにより症状は一時的に軽減されますが、「にきびができやすい体質」は変わらないため、また再発することになります。漢方では「にきびができやすい体質そのものを漢方薬で改善し、にきびを治療していきます」と幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは話します。
「社会人になってから、にきびができるようになりました。月経前に悪化します」

Aさんは、こめかみや、あご、耳の下などに、赤いにきびができています。月経前は、にきびが多発するだけでなく、いらいらや落ち込みも激しくなります。舌は赤く、白い舌苔が薄く付いています。
にきび(尋常性痤瘡:じんじょうせいざそう)は、毛穴の中(毛包)に皮脂がたまり、炎症が生じた病変です。毛穴の入り口が角化してふさがって丘疹(きゅうしん)となり、アクネ菌(にきび菌)が繁殖して炎症を起こし、赤くなります。化膿することもよくあります。にきび痕(あと)や、色素沈着が残る場合もあります。日本人の成人の9割以上がこの病気を経験しているといわれています。
にきびは、睡眠不足や疲労の蓄積、食事の不摂生、便秘、化粧品の刺激、喫煙などによって悪化しますが、その根本には、「にきびができやすい体質」があります。漢方では、その「にきびができやすい体質」そのものを漢方薬で改善し、にきびを治療していきます。
にきびと深い関係にあるのは熱邪
にきびと関係が深いのは熱邪(ねつじゃ)です。熱邪は、自然界の火熱により生じる現象に似た症状を引き起こす病邪(病気の原因となるもの)です。炎症、発赤(はっせき)、熱感、化膿、かゆみ、痛みなどの熱証があらわれます。
熱証には、熱邪の勢いが盛んになって生じる実熱(じつねつ)と、平素は熱と平衡を保っている水液などの消耗により相対的に熱の勢いが強くなる虚熱(きょねつ)とがあります。にきびにも、この2タイプがあります。
勢いが強く、赤く、かゆみや痛みを伴い、ときに化膿するにきびは、実熱型です。熱邪の勢いが強いため、このような鮮明な症状があらわれます。ストレスや激しい感情の起伏などで生じる場合もあります。女性の月経前に多発するにきびも、このタイプです。
一方、過労や体調不良、抗菌薬の長期服用などの影響でなかなか消えずに持続するにきびは、虚熱型です。熱邪を排除する力に欠けるため、にきびがなかなか治りません。
なかなか治らないにきびには、血流が鬱滞(うったい)しやすい体質によるものもあります。暗い色や紫紅色のにきびができたり、にきび痕に色素沈着が残ったりするタイプです。
西洋医学では、どのようなにきびに対しても抗生物質などで抗菌して炎症を抑え、にきびの治療をします。にきびの症状は一時的に軽減されますが、「にきびができやすい体質」は変わらないため、にきびはまた再発することになります。漢方では、たとえば実熱型のにきびに対しては熱邪を冷まし、虚熱型のにきびに対しては水液を補うなどして、根本的ににきびの治療をします。