生理(月経)のある女性の10人に1人が発症するといわれる「子宮内膜症」。激しい月経痛に悩まされるだけでなく、妊娠もしにくくなります。ホルモン治療や手術をしても再発しやすく、月経を繰り返すたびに症状が悪化していきます。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方薬で体質改善を進めれば、月経痛などの症状が次第に軽くなり、再発の可能性が低くなります」と話します。
「もともと生理が重いほうでしたが、ここ数年でさらに生理痛がひどくなってきました。市販の鎮痛薬が効かないこともあり、心配になり婦人科を受診したところ、子宮内膜症と診断されました。右の卵巣に5センチ大のチョコレート嚢胞があるとのことで、手術をすすめられています」

Aさんは、月経前から重い下腹部痛があり、月経が始まると同時に激しい痛みに襲われます。脂汗が出るような痛みです。3日目くらいまでは経血にレバー状の血のかたまりが混じりますが、それを過ぎると出血量が少なくなり、月経痛も楽になります。
月経の周期は28日で安定しています。月経痛以外には、便秘、手足の冷え、のぼせ、肩こりなどの症状があります。子宮の外側に小さな子宮筋腫もありますが、そちらは経過観察でいいとのことです。舌には紫色の斑点がみられます。
子宮内膜症は、子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜が、卵巣や、子宮の外側などにもできてしまう病気です。その部分が、月経のたびに、子宮の内側の正常な子宮内膜と同じように、はがれては出血を繰り返すため、次第におなかのあちこちで炎症や癒着が生じていきます。子宮内膜症は、月経がある女性の10%にみられるといわれており、患者数の多い疾患です。
Aさんの診断にあった「チョコレート嚢胞」は、子宮内膜症の人によくみられるもので、卵巣内の出血のかたまりです。子宮内膜が卵巣の内部にできると、ふつうの月経と同じような子宮内膜の増殖と出血が卵巣のなかで繰り返され、次第にその部分に出血がたまっていきます。それが古くなるにつれて茶色い粘稠(ねんちゅう)なチョコレート状になるため、チョコレート嚢胞とよばれています。チョコレート嚢腫とよばれることもあります。大きさが5センチを超えて破裂や茎捻転の可能性が高い場合は、Aさんのように手術がすすめられます。
子宮内膜症のおもな症状は、激しい月経痛です。ホルモン治療や手術をしても再発しやすく、また月経を繰り返すたびに症状が悪化するのもこの疾患の特徴です。また、子宮内膜症があると妊娠しにくくなります。チョコレート嚢胞の影響で卵巣の機能が低下しますし、癒着があれば卵管の通りがわるくなります。また炎症の影響で精子や卵子にも負担がかかり、妊娠の可能性は低くなります。
このように再発しやすく症状が徐々に悪化しやすい疾患ではありますが、漢方薬で体質改善を進めれば、月経痛などの症状が次第に軽くなり、再発の可能性が低くなります。ホルモン治療のように排卵を止めることはありませんので、妊娠に向けて漢方薬が活用されることも少なくありません。