トイレが近くなった、夜間にトイレで目を覚ます機会が増えた…。40代、50代と年齢が上がってくると、尿に関する悩みが増えてきます。秋や冬などの寒い時期だけでなく、暖かい季節でも慢性的に頻尿に悩む人も少なくありません。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「頻尿は不快なもので、生活の質(QOL)に直結します。漢方薬で頻尿体質を根本から改善しておけば、QOLの向上につながります」と話します。
「年齢とともにトイレが近くなりました。とくに夜、寝ているあいだに毎晩3回ほど尿意で目が覚め、質のよい睡眠がとれません」

Aさんの場合、尿は毎回、しっかり量が出ます。薄い色をしています。昼間はあまりトイレに行きません。年とともに寒がりにもなりました。手足が冷え、下半身がむくみます。舌は赤みが少なく、白っぽい色をしており、湿っぽい舌苔が付いています。
急にからだが冷えたときに尿の回数が増えたり、酒を飲んだときにトイレに行く回数がいつもより多くなったりという経験は、どなたにでもあることでしょう。しかし、そのような一時的な頻尿ではなく、ふだんから尿の回数が多かったり、また夜間に何度も尿意を感じて目が覚めたりするようになると、頻尿も不快なものです。
頻尿は尿の回数が多い病態ですが、尿量は、毎回多くしっかり出る場合も、そうでもない場合もあります。さっき排尿したところなのにまたすぐに尿意を感じる、というタイプの頻尿もあります(尿意促迫といいます)。
頻尿は、秋や冬などの寒い時期だけの症状ではなく、暖かい春や夏でも慢性的に悩む人は少なくありません。漢方薬で頻尿体質を改善しておけば、生活の質が向上するのではないでしょうか。
頻尿と関係が深いのは、五臓六腑の腎、膀胱、肝
漢方では、尿は「六腑」の膀胱に貯蔵され、「五臓」の腎の作用によって排泄が調節されると捉えています。「五臓」は気・血(けつ)・津液(しんえき)などを生成し貯蔵する機能的単位であり、「六腑」は飲食物を受け入れて排泄まで導く中空の器官です。津液とは、人体のおもな構成成分のひとつで、人体に必要な正常な体液を意味します。腎のおもな機能は、成長・発育・生殖をつかさどることですが、水液をつかさどる機能も持っており、排尿の調節をするわけです。
また、腎と膀胱だけでなく、からだ全体の機能の調整をする五臓の肝(かん)の機能失調なども頻尿に関係してきます。
臓と腑の関連は深く、臓腑は「表裏をなす」関係にあるといいます。たとえば五臓の腎と六腑の膀胱は密接な関係にあり、両者の連携により、排尿がコントロールされます。臓が陰で裏、腑が陽で表です。