電車やエレベーターに乗ったりすると、不安感や恐怖感が高まり、動悸、めまい、冷や汗、呼吸困難などの症状があらわれるパニック発作。多くの場合、発作は繰り返して起こります。そのため、また発作が起こるのではないかという不安や恐怖を感じ続けることになります。西洋医学では、抗不安薬などを処方して対処しますが、「漢方では、不安を感じやすいパニック体質を根本から改善していくことにより治療を進めます」と幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは話します。
「2年ほど前に、高層ビル最上階の展望台までの直通エレベーターの中で急に息苦しくなり、呼吸が荒くなり、強い吐き気が生じ、からだが震え、あせって気を取り乱したことがあります。すぐ病院に運ばれましたが、病院に着くころには落ち着いてきており、検査にも異常がありませんでした。しかしそれ以来、そのときの恐怖が頭から離れず、また同じような発作がいつ起こるかと不安で仕方ありません」

Aさんは、もともと心配性であせりやすく、寝つきがわるく、寝ても物音などですぐ目が覚めるタイプです。朝は目覚まし時計が鳴る前に目が覚めます。貧血ぎみで、めまいや立ちくらみがあります。舌は紅い色をしています。
人は危険を察知すると、それに対処するためにさまざまな変化がからだに起こります。例えば、心拍数が上がり、血流量が増えます。ところが、ときとしてこの仕組みが敏感すぎたり不安定だったりするために、特に危険が迫っていないのにスイッチが入ってしまう場合があります。これがパニック発作です。
パニック発作が起こると、不安感や恐怖感が高まり、動悸(どうき)、めまい、ふるえ、冷や汗、呼吸困難などの症状があらわれます。このまま死んでしまうのではないか、という恐怖を感じることもあります。このようにパニック発作が起きたあと、さまざまな障害が引き起こされるのがパニック障害です。
一回の発作は長く続かない場合も多く、救急車で運ばれて病院に着いたころには症状が治まっている場合もあります。検査をしても異常が見つからないケースがほとんどのようです。
しかし厄介なことに、パニック発作は多くの場合、繰り返して起こります。そのため、また発作が起こるのではないかという不安や恐怖を感じ続けることになります。これを予期不安といいます。とくに発作を起こした状況や場所、あるいはそれに似たシチュエーションには近づけず、例えば急行電車や飛行機には乗れなくなるなど、日常生活が制約されることになります。これを広場恐怖といいます。睡眠中など、リラックスしている状況で発作が生じる場合もあります。
西洋医学的には、セロトニンやノルアドレナリンなど脳内の神経伝達物質のバランスの失調がパニック障害と関係が深いという観点から、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、抗不安薬などが処方されます。漢方では、不安を感じやすいパニック体質を根本から改善していくことにより、パニック障害の治療を進めます。