ストレス状態にさらされると、胸焼け、げっぷ、むかつき、呑酸(どんさん)など、胃の不調を感じませんか。胃酸の逆流による粘膜の炎症やびらん(粘膜のただれ)、潰瘍は「逆流性食道炎」と呼ばれる病気です。「漢方では、肝火を冷まして熱証を和らげたり、胃の陰液を補うことで熱を冷まして胃酸の逆流を防いでいきます」と幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは話します。
「このところ胸焼けがひどく、ときに酸っぱい胃酸が口のなかにまで上がってきます。ストレスを強く感じるときには、胃がキリキリと痛みます。病院でもらった薬を飲むと楽になりますが、飲むのをやめるとまた胸焼けがします」
胸焼けの症状がひどくなったのは、仕事の量と責任が増えて残業が多くなり、ストレスを強く感じるようになったころからだと話すAさん。のどが胃酸の刺激でヒリヒリするからか、冷たい水をよく飲むそうです。Aさん本人は気付いていなかったようですが、家族から「最近イライラしている」「怒りっぽくなった」と指摘されたと打ち明けてくれました。病院では胃酸の分泌を抑える薬を処方してもらっていました。舌は赤く、黄色い舌苔(ぜったい)がついています。
胃酸が食道に逆流して食道の粘膜を刺激し、粘膜に炎症やびらん(粘膜のただれ)、潰瘍を引き起こすのは、「逆流性食道炎」と呼ばれる病気です。胃の入り口(噴門:ふんもん)から食道やのどの方に胃液や食べ物が逆流すると、強酸性の胃酸が食道の粘膜を傷つけ、痛みや不快感の原因になります。胃は胃酸から自身を守る働きがありますが、食道やのどにはその働きがないため、炎症やびらんが起きやすいのです。
本来は胃から食道へと逆流しないように噴門は閉じているはずです。開いてしまうのは、噴門部の筋肉がゆるんでしまうことのほかに、胃酸の過剰分泌、食道のぜん動運動の失調、食道裂孔(れっこう)ヘルニアなどの原因が考えられます。
逆流性食道炎は、ストレス、暴飲暴食、とくに脂肪の多い食事や過度の飲酒、それに肥満、喫煙、猫背などの悪い姿勢、加齢などにより生じやすく、近年増え続けているようです。パソコンの前で、背中を丸くして、足を組んで、あごを出して座っている姿勢は、相当胃を圧迫していることでしょう。