春先は花粉症の人には辛い時期です。しかし、この時期だけでなく一年を通じて鼻炎に悩まされる人も少なくありません。西洋医学では抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬で鼻炎の症状を抑えますが、それで鼻炎が治ったわけではありません。薬が切れればまた同じような症状が現れます。幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは、「漢方薬で体質を改善し、鼻炎を根本的に治療します。必要なときに西洋薬を併用して症状を抑えるといいでしょう」と話します。
「寒い屋外から暖かい部屋に入ると、温度差で鼻水が出ます。お風呂上がりに髪の毛がぬれたままでいると冷えて、すぐくしゃみや鼻水が出ます」

Aさんの鼻水はうすくさらさらで、水のように垂れてきます。くしゃみは続けざまに出ます。若いころから寒がりで、とくに手足が冷えます。病院や薬局の鼻炎薬は、飲むと胃に障(さわ)るし、眠気や鼻腔の乾燥感などの副作用が強いので、飲んでいません。舌は大きくて、色は白っぽく、湿っぽい舌苔が付着しています。
この時期は花粉症に悩まされる人が大勢いますが、一年を通じて鼻炎に悩まされる人も少なくありません。Aさんのように温度変化に反応して症状が出る人もいれば、ハウスダストやダニ、動物の毛などの刺激で症状が出る人もいます。鼻炎症状を引き起こすアレルゲンは、身の周りにたくさんあります。
鼻炎に対して、多くの人は抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬で症状を抑えて過ごしていますが、それは鼻炎が治ったわけではありません。症状を抑えているだけですので、薬が切れればまた同じような症状が現れることになります。
この不愉快な鼻炎を根本的に治すことはできないのでしょうか。
本治と標治
病気には「根本原因」があり、結果として「症状」が生じます。さらに、症状を引き起こす「引き金」があります。以下のとおりです。
鼻炎の場合、「(3)症状」は、鼻水や、鼻づまり、くしゃみなどで、「(4)引き金」は、ハウスダストや花粉、温度変化などです。そして「(1)根本原因」は、アレルギー体質です。アレルギー体質でなければ、いくら花粉が飛んできても、急に暖かい部屋に入っても、鼻水やくしゃみは出ません。
西洋医学は一般に、上図の「(3)症状」を治療するのを得意とします。対症療法といいます。一方、漢方は、上図の「(1)根本原因」を治療するのを得意とします。原因療法といいます。
漢方では、「(1)根本原因」のことを本(ほん)、「(3)症状」のことを標(ひょう)と呼びます。そして病気の「(1)根本原因」を根本的に治療する原因療法を本治(ほんち)、「(3)症状」を抑える対症療法を標治(ひょうち)といいます。漢方は、本治を重視しています。
本治、標治、ともに大切です。鼻炎の症状が強く出ているときの大事なプレゼンテーションの前に西洋薬を飲んで症状を抑えておくこと(標治)は、ごく自然なことです。
本治をするか標治をするかは、患者自身が決めることです。医師や薬剤師は状況に応じて患者に助言はしますが、たとえば症状がつらいときだけ何とかしてくれればいいという患者には漢方薬は必要ありません。一般には、漢方薬で体質改善しつつ(本治)、必要なときに西洋薬を使って症状を抑える(標治)、というやり方がいいように思われます。