30、40と年齢が上がってくると、薄毛や抜け毛に悩む人が増え始めます。男性のみならず、薄毛に悩む女性も少なくありません。皮膚の疾患といった直接的な原因がないのに、頭髪が抜けたり薄くなる場合、たいてい“心身の不調”が影響しています。「抜け毛や薄毛は、心身の健康状態の悪化を警告する“お知らせ”です。漢方では、心身の不調を漢方薬で改善し、髪の毛の悩みを根本から解消させていきます」と幸福薬局の薬剤師、幸井俊高さんは話します。
「去年くらいから脱毛が増えてきました。シャンプーした時に抜ける髪の毛の量が以前より増えており、気になります。今年になって脱毛の範囲が広がり、心配になっています」
Aさんは去年、仕事が忙しく、ストレスも多かったことから、円形脱毛が一つできました。病院で薬をもらいましたが、改善しませんでした。当時は、髪で隠れる程度の小ささだったのでそのままにしていたそうです。ところが、今年、社内で昇進したのをきっかけにストレスがぐっと増えたところ、新たに別のところに円形脱毛が見つかりました。相変わらず病院の薬では改善がみられません。イライラ、不眠、のぼせなどの症状もあります。舌は赤く、黄色い舌苔が付着しています。
Aさんのように、特に病気というわけでもないけれど、洗髪時に抜け毛の増加に気がついたり、朝起きたときに枕に落ちている髪の毛の量にどきっとしたり、鏡に映る後退し始めた“おでこ”の生え際を見て焦ったりすることがあります。このような脱毛や抜け毛の悩みを持つ人は少なくありません。

加齢による脱毛はある程度は仕方のないことですが、それ以外にも、皮膚の疾患、ホルモンバランスの変化、アレルギー、薬の副作用、紫外線の影響などが原因で髪が抜ける、あるいは髪が薄くなることもあります。その一方で、思い当たる直接の原因が特にないにもかかわらず、頭髪が抜けたり薄くなったりすることも少なからずあります。
そのような場合、必ずと言っていいほど体内で健康状態が悪化しています。それは、からだの問題の場合もあれば、心の問題の場合もあります。これら心身の体調の変化が、頭髪の状態に反映されているのです。漢方では、そのような心身の不調を漢方薬で改善することにより、髪の毛の悩みを根本から解消させていきます。
脱毛のおもな原因は血(けつ)の失調にあり
漢方では、髪の毛のことを「血余(けつよ)」といいます。血(けつ)は漢方の言葉で、血液だけでなく、血液が運ぶ、人体の生命活動に必要な栄養、という意味もあります。したがって血余というのは、大切な生命活動に血を使い、その余りが頭髪になる、という意味です。髪の毛の質には、その人の栄養状態が大きく反映されることになります。
人のからだは、自ら健康を維持するようにできています。もし体内の栄養状態が悪化した場合、からだは生きていくために重要な内臓を優先的に守るため、栄養はまず内臓に回されます。したがって、髪の毛に供給される栄養が減ります。その結果、髪の毛が抜けたり薄くなったり細くなったりします。同じ理由で、爪ももろくなります。内臓のほうが大事なのです。
髪の毛や爪は、からだの外から見えるので変化がわかりやすいという面があります。抜け毛が増えたり髪が薄くなってきたりしているならば、それは体内の健康状態が悪化してきていることを警告する“お知らせ”と言えます。髪の毛の外観上の問題も大事ですが、それに加えて「健康を維持」「健康状態の悪化を予防する」面からも、漢方薬を使って、体質面から健康状態を改善しておくといいでしょう。
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