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ベテランドクターが教える 上手な医者のかかりかた

“心付け”で治療の質は上がらない

医師は元気になった患者さんからの言葉がうれしい

 橋口玲子=緑蔭診療所医師

「医療とは、医師から受けるもの」、こんな一方通行のイメージを私たちは抱いてしまいがちです。しかし、最善の医療は患者がかしこく「手に入れるもの」という発想を持つと、今よりももっと満足のいく治療を受けられたり、医師とのコミュニケーションをもっとうまくできるようになるはずです。臨床経験が豊富で、遠方からの患者を多く受け入れる緑蔭診療所の橋口玲子先生に、知っておくと絶対役立つ、患者の心得を指南してもらいます。

 前回(「お薬手帳はあなたのカラダの『代弁者』」)は、お薬手帳をきちんと管理することが医療を受ける際にすごくプラスになる、というお話をしました。今回は、入院時にありがちな、こんなシーンについてとりあげてみましょう。

Fさん(男性)
「父親ががんの手術を受けることになったんです。父親に『心付けを渡してくれ』と頼まれたので、手術前にお金を包んで執刀医に渡そうとすると、きっぱりと断られてしまいました。せめて、と思って鉢植えの花をナースステーションに持って行ったけど、それすら受け取ってもらえなくて…」

 Fさんは、お父さんから頼まれたこともあり、また、お父さんの手術に医師がしっかりと注力してくれるよう、せめて自分ができることとして、お金を渡そうとしたのでしょう。しかし、「心付けを渡せばその分、医師は一生懸命に治療をしてくれるはず」あるいは「特別扱いをしてくれるはず」というのは、まったくの思い込み、思い違いなのです。

医療従事者が患者から金品を受け取ることは固く禁止されている

医療従事者に金品を渡すことは禁じられています。(© Jozef Polc-123rf)
医療従事者に金品を渡すことは禁じられています。(© Jozef Polc-123rf)

 ドラマなどでは、廊下でこっそり「先生、よろしくお願いします」と白衣のポケットに封筒をねじこむ、といったシーンがあるようですね。年配の方は特に、命を救ってくれる医師には心付けを渡すのが当たり前、と思い込んでいる人が多いようです。

 そのようなやりとりが行われていた時代もあったのかもしれませんし、VIP用の特別病室があるような病院では、今もこのような慣習はひょっとしたら存在するのかもしれませんが…。

 現実的な話をすると、公立病院ではこういった金品による謝礼の受け取りは、「公務員の倫理規定に抵触する」ために一切禁止となっています。「医師や看護師に対する心付けなどは一切お断りいたします」と貼り紙をしているところも多いでしょう。民間病院の職員は公務員ではありませんが、原則として同じルールで運用している例が一般的です。

 現金でないのなら、商品券、お花、あるいはナースステーションへの菓子折…、と別の方法を模索する人もいるかもしれません。しかし、これらはすべて、「金品による謝礼」に含まれます。

 よくある話で、お花をもらって嫌がる人はいないのでは、と思うかもしれませんが、生花は花粉や強い香りが患者さんの刺激になったり心身の不調のもとになることがあり、お見舞いも含め病院への持ち込みを禁止するところが増えています。花瓶など、落下すると割れてケガをさせてしまう恐れがあるものを置くことも、医療施設では避けていることが多いのです。菓子折も、貼り紙で断っているのに、「悪くなっちゃうから受け取って」と無理矢理渡されると、その処分には本当に困ってしまうものです。

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