治療には多くの医療従事者が関わっている
患者さんは素直に「感謝の気持ちを伝えたい」と思われたり、「心付けを渡せば他の患者さんより真剣に処置をしてもらえる」と思われるのかもしれません。しかし、「常に最善を尽くそう」と信念を持って働いている医師にとっては、そもそも心付けなど必要ありませんし、もしかしたら「失礼な話だ」と受け止められることも考えられます。
しかも、何度もお断りしているのにしつこく謝礼を渡そうとする…。そんな患者さんは正直「面倒だな」と思って、対応がおざなりになってしまうことだってありうるかもしれません。
手術をはじめ、治療の際にはたくさんの医療者が関わることになります。主治医、執刀医以外にも、手術中は麻酔医や看護師など、多くの医療者がチームとなって働いています。ですから、そのうちの誰かに「うちだけ特別扱いをしてください」と頼んでも、実際には無理な話なのです。
お礼の気持ちだけで医師は十分嬉しい

多くの医師にとって、患者さんが治療を終えて、元気になることが一番のやりがいになっているはずです。最後に「ありがとうございました」と、気持ちがこもったこの言葉をかけてもらうだけで、また次もがんばろうと思えます。
医師に面会できない場合は、カードに書いたメッセージでも、伝言でもいいと思います。気持ちを伝えてくださる言葉は、受け取った側の負担にもならず、なにより心に残るものです。
まとめ
- 公立病院の場合、医師をはじめとする医療従事者が、患者・家族からお金や品物を受け取ることは禁じられている(私立病院でも、同様のルールである例が一般的)
- 強引に渡そうとすることのほうが、医療者側の負担になる
- お礼の気持ちは心をこめた言葉で十分
(まとめ:柳本 操=フリーライター)

(写真:室川イサオ)