「医療とは、医師から受けるもの」、こんな一方通行のイメージを私たちは抱いてしまいがちです。しかし、最善の医療は患者がかしこく「手に入れるもの」という発想を持つと、今よりももっと満足のいく治療を受けられたり、医師とのコミュニケーションをもっとうまくできるようになるはずです。臨床経験が豊富で、遠方からの患者を多く受け入れる緑蔭診療所の橋口玲子先生に、知っておくと絶対役立つ、患者の心得を指南してもらいます。
前回は、ネット上に氾濫する情報に振り回されず、医師としっかりコミュニケーションをとる必要についてお話しました。今回は、医療を受けているときのこんなハプニングについて、考えてみましょう。
「先日、かぜで初めて処方された薬を飲んだら、その直後にじんましんが出てびっくり…。薬のせいかと思い心配で、飲むのを止めてしまったのだけど、まだのどが痛くて…」
処方された薬を飲んだ後にじんましんが出ると、誰しも慌てるし、不安になるものですね。
薬疹(*)を心配して受診すると、おそらく医師から「どのような薬を飲みましたか?」と聞かれることでしょう。たまに薬にものすごく詳しい患者さんがいらっしゃいますが、ほとんどの方は飲んだ(飲んでいる)薬について的確に答えることはできません。でも、それが当たり前だと思います。
例えば、かぜで薬が処方されるときには、咳を止める、痰を切る、鼻水を止める、頭の痛みをとる―など、目的が異なるいろいろな種類の薬が同時に処方されることがほとんど。複雑で自分では到底把握できそうにもない薬の情報を見渡したいときに、役立ってくれるのがお薬手帳です。
*薬疹とは、薬が原因で起こる発疹のこと。じんましん、紅斑(盛り上がりのない赤いまだらのような発疹)、なかなか治まらないコインの形に似た発疹など、症状の出方はさまざまです。
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