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ベテランドクターが教える 上手な医者のかかりかた

ネットの情報が治療効果を下げている?

玉石混交の情報とうまく付き合う5カ条

 橋口玲子=緑蔭診療所医師

「医療とは、医師から受けるもの」、こんな一方通行のイメージを私たちは抱いてしまいがちです。しかし、最善の医療は患者がかしこく「手に入れるもの」という発想を持つと、今よりももっと満足のいく治療を受けられたり、医師とのコミュニケーションをもっとうまくできるようになるはずです。臨床経験が豊富で、遠方からの患者を多く受け入れる緑蔭診療所の橋口玲子先生に、知っておくと絶対役立つ、患者の心得を指南してもらいます。

 前回は、医師に対して自分が困っている症状をいかに上手に伝えるか、という技術についてお話をしました。最近、診察の前や治療の合間にインターネット上の情報を覗いて不安を強めたり、治療自体を疑って勝手に止めてしまう患者さんに出会います。根拠が不確かなネット上の情報に振り回されて、不利益をこうむっていませんか。

Dさん(男性)
「アトピーの治療にステロイドを使い始めると、どんどん薬が強くなっていくってネットに書いてありました。しかも、ステロイドは止められなくなるっていうじゃないですか。そんな怖い薬、使いたくないから、2日にいっぺんしか塗っていないんですよ…」

 Dさんはアトピー性皮膚炎を患っている患者さんです。春や秋といった季節の変わり目になると症状がひどくなり、皮膚科にかかるのですが、症状が落ち着いてくると通うのを止めてしまいます。

 他の病気で私の診療所を受診してきたので話を聞くと、どうやらステロイド外用薬への不安感が強く、定められた用法・用量を守っていないとのこと。なかなかアトピー性皮膚炎が良くならず、本人も実はどうしたら良いのか困っていたようでした。

ネット上の情報に飛びつく前に、冷静な判断を

ネット上で公開されている情報は玉石混交であり、誰が誰に向けて書いているのかわからない内容が多いのが事実。(©okolaa-123rf)

 Dさんのように、「ネットでこのような記事を読んだから、この薬は使いたくない」と思う患者さんは少なくありません。

 代表的な例は、Dさんのケースで紹介したステロイド外用薬です。「使うのを止めたら顔がパンパンに腫れ上がって、皮膚がジクジクしてきた」「ステロイドは使い続けると効かなくなって、どんどん強い薬になっていく」―など、副作用が怖い、などネット上では偏った情報が飛び交い、その結果、科学的根拠の乏しい高額な商品を売りつける「アトピー商法」が横行する原因にもなっています。

 しかし、ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎の治療経験を積んできた専門医の下で正しく使用すれば、さほど副作用を心配せずに症状改善に力を発揮してくれます。

 Dさんのように、ネットで仕入れた知識から薬に対する不安を募らせたものの、医師に打ち明けられず、自己判断で使うのを止めてしまったり、使う量を調整してしまった経験は、多くの方が持っているのではないでしょうか。

 もちろん、ステロイド外用薬だけでなく、さまざまな病気や治療法に対して、個人の体験談や考えがネット上でやりとりされています。しかし、ネット上で公開されている情報は玉石混交であり、誰が誰に向けて書いているのかわからない内容が多いのが事実です。

 また、読み手が「薬を使いたくない」などの不安を持っているときこそ、自分の都合がいいように情報を解釈しがちです。活字になっていると、いかにも真実のような気がしてしまうもの。ネットで見かけたケースが、そっくりあなた自身に当てはまるものとは限りません。ネット上の情報で、治療について客観的な情報を整理したり、治療に取り組むやる気を高める分には良いのですが、ときには治療の妨げになる場合もあることを覚えておいてほしいと思います。

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