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立川らく朝の「わかっちゃいるけど…」

太っ腹がケチに変わる時

メタボは意外と簡単に治る

 立川らく朝

健康に気をつけるべき、体に悪い習慣は改めるべき、とわかっていても、「そんなの無理だよ、できないよ」というのが、日々忙しく働く人たちのホンネ。落語家であり医学博士でもある立川らく朝さんが、現代社会に生きるビジネスパーソンへの共感を込めてつづる健康エッセイ。読んでほっこり癒されて!

(イラスト:つぼいひろき)

「ここの払いは俺が出すから。いいんだよ、金は天下の回りもの」

太っ腹なところを見せて大盤振る舞い。みんなに酒を奢ってタクシーでご帰還。

「運転手さん、ここで降ろして」

「お客さん、こんな塀の前でいいんですか」

「いいんだよ、この塀の先まで行くとな、いつもメーターが上がるんだ」

 人間って、矛盾だらけの生き物ですよね。タクシー代を節約するくらいなら奢らなきゃいい。だけどこんな矛盾を抱えているのが、人間ってものかもしれません。

 世の中にはケチな人って沢山います。落語にもケチはよく登場しますが、これはもうほとんどが大店(おおだな)の、それも多くは一代で財を成した大旦那。でも落語ではみんな嘲笑の対象になっちゃうんですね。金持ちは江戸っ子とはうまが合わない。そりゃそうでしょう、江戸っ子は「宵越しの銭は持たねえ」というのが美学でしたから、財産を溜め込んでいる商人とは、真逆の価値観でした。

 でもね、江戸っ子の職人だって、仲間内では、「銭を溜めるなんざあ江戸っ子の恥」なんてことを言いながら、じつはこっそり貯金していたりなんかして。十分に考えられますよね。人間って、相反する気質を同時に持っているものです。じつは、我々の身体の中にも、こんな相反する気質も持つものがあるんです。それは「褐色脂肪細胞」なんですね。

 脂肪細胞には、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の二種類があって、それぞれ働きが異なります。白色脂肪細胞は、余分なカロリーを脂肪として溜め込んで肥大する、つまり太るわけです。ところがね、褐色脂肪細胞というのはその反対で、カロリーが供給されるとどんどんそれを使って(燃焼させて)熱を作り出し、肥満を防いでくれるんです。言わば褐色脂肪細胞は貯蓄が大嫌い、稼いだ銭はすぐ使っちゃう。宵越しの銭は持たねえ、という江戸っ子と同じなわけですよ。

 ところが、この金離れの良い褐色脂肪細胞も、ちょっと矛盾した性格を持っていて、あまりに収入が多くなると、今度はそれを消費することをやめて、貯蓄に転ずるらしいのですよ。東北大学の研究グループは、たくさん食べる、つまりカロリーオーバーになると、褐色脂肪細胞でのエネルギー消費が低下することを発見したのです(*1)。つまり、収入が余分にあり過ぎると、太っ腹がケチに変わってしまうんですね。

 思いっきり食べているうちに脂肪細胞の性格が変わってますます肥満が進む、怖い話ではありませんか。え、「私は、スイーツを見ただけで性格が変わる」・・・よくいるんだ、そういう人。

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