でも歯周病は、歯が抜けるだけじゃないんですね。歯を磨かないと心筋梗塞や脳卒中になりやすいんです。「うそ、そんなの関係ないだろ」って、まあ人の話をお聞きなさい。この細菌(歯周病菌)は、口から心臓や脳の血管に辿り着き、そこで炎症を起こします。これがなんと動脈硬化を進めて、心筋梗塞や脳卒中の原因になるんです。
英国の研究者が、およそ1.2万人の男女(平均年齢は50歳)を調査したんですね。ナニ調べたかって、歯磨きの回数ですよ。対象者のうち、1日に2回歯磨きする人が71%、1回だけという人が24%、1回未満が5%でした。
さて、この人たちを8年間くらい追跡調査して、心筋梗塞や脳卒中がどのくらい発症したかを調べたんですね。すると、1日に2回歯を磨くグループに比べると、1回しか磨かないグループでは心筋梗塞や脳卒中の発症が1.3倍、そして1回未満のグループでは1.7倍高かったのだそうです(*1)。
バタンキューで歯を磨かない日が何日もあると、心筋梗塞や脳卒中にかかる確率がドーンと上がるということですよね。どうです、酔っ払っていても、疲れていても、歯を磨きたくなったでしょ。
タダでは死なない奴ら
まだあるんですよ。歯周病菌が死ぬと、これまた怖いことが起きてくるんです。菌の中から毒素(内毒素)が出て、なんと糖尿病が悪化してしまうんです。タダでは死なない、そんなしぶとい連中なんですね、歯周病菌というのは。
こうした歯周病による悪影響は、歳を取ってもまだまだ続くんです。じつは歯周病があると、認知症が進行する可能性すら出てきたんですね。もういい加減にしてくれ、ですけど、でもそれほど甘い連中じゃないんですよ。
これは日本で行われた研究なのですが、マウスを歯周病にして研究したところ、歯周病になったマウスでは、認知機能の低下が認められたんですね(*2)。そりゃね、これはマウスでの話かもしれませんよ。でもだからといって安心してるわけにはいかないんです。マウスだけに、チュウ意が必要なんです。
歯周病がひどくなって歯が抜けてくると、今度は本当に認知症の危険が忍び寄ってきます。愛知県で行われた研究ですが、65歳以上の人を3年から4年間追跡調査して、歯と認知症の関係を調べました。すると残っている歯の数が少ない人の方が、認知症のリスクが高いことが分かったのです(*3)。
やっぱり自分の歯で噛むことは大事なんです。歯周病にならないで歯を残すってことは、認知症の予防にもなるんですね。この話をある老人ホームで講演した先生がいたんです。でも相手が高齢者だから、理解してもらうのに苦労したんですって。どうやって話したのか聞いたら、「噛んで含めるように」話したんだってさ…本当?
*2 アルツハイマー病修飾因子としての歯周病の可能性に関する研究
http://www.ncgg.go.jp/ncgg-kenkyu/documents/24/24xx-09.pdf
*3 平成22年度厚生労働科学研究
第35回 2015年12月15日(火)19:00開演
らく朝新春独演会 2016年1月21日(木)19:00開演
お申込みはオフィスらく朝(03-6661-8832)、詳細はHPで。
BS日テレ毎月曜日「Dr.らく朝笑いの診察室」放送中。
ラジオNIKKEI第3土曜日「大人のラヂオ」パーソナリティ。
落語家(医学博士)

2000年、46歳にして立川志らく門下に入門、プロの落語家として再出発する。
2004年、立川流家元、立川談志に認められ二つ目昇進。医学博士でもある立場を生かし、健康教育と落語をミックスした「ヘルシートーク」、「健康落語」、「落語&一人芝居」という新ジャンルを開拓。マスコミなどで評判となり全国での公演に飛び回る毎日。また「健康情報を笑いを交えて提供する」というコンセプトで全く新しい講演会を精力的に開催。2015年10月1日付で真打昇進。笑いと健康学会理事。日本ペンクラブ会員。公式HPはこちら。
(写真:増田伸也)