日経グッデイ

立川らく朝の「わかっちゃいるけど…」

更年期に“うつ”にならない方法

あると面倒、ないと寂しい

 立川らく朝

健康に気をつけるべき、体に悪い習慣は改めるべき、とわかっていても、「そんなの無理だよ、できないよ」というのが、日々忙しく働く人たちのホンネ。落語家であり医学博士でもある立川らく朝さんが、現代社会に生きるビジネスパーソンへの共感を込めてつづる健康エッセイ。読んでほっこり癒されて!

(イラスト:つぼいひろき)

「女性って大変よねえ。生理があればあったで面倒、無くなるころになれば、今度は更年期障害なのよ」

「女性の身体はいつも変化するものなのよ。祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きありってね」

「難しいこと言うじゃない」

「だって、この本に書いてあるのよ」

「ナンて本読んでんの」

「うん、ヘイケ(閉経)物語」

 それにしても女性って、歳取っても皆さんお元気ですね。元気な女性の代表が芸者さん。芸事ってのは幾つになってもできるものなんですね。ある名物芸者で「あやめ姐さん」、どんな艶やかな芸者かと思うと、じつは当年取って88歳。このあやめ姐さん、 米寿の祝いを機に、「あやめ」から「およね」に名前を変えようという強者なのです。

 これだけの人になるとお座敷では大人気、「おい、あやめ姐さん呼んでくれ」「あら、御免なさい、姐さん今日はお休みいただいてるの」「どうしたい、とうとう神経痛でも出たかい」「いいえ今日は、生理休暇なの」…図々しい話があったもんだ。

 生理というのは、普通50歳前後でなくなるもの、これを閉経といいます。 10歳ごろからずーっとあったものがなくなるのだから、感慨ひとしおなのかもしれません。

 もっとも男の私にはそこら辺の微妙な感情というのは分かりようもないですよ。医学部の授業中、産婦人科の教授が「生理というものはね、女性にとって、あると面倒だけど、ないと寂しいものなんだよ」と、実感を込めて言ってました。でもねえ、かく言う教授も男なんだもん、本当のことは分からないと思うんだけどなあ。

ハワイから富良野へ

 女性は男性よりはるかに複雑怪奇で、いや、まあ、何かと大変で、いろいろな節目があります。初潮があり、思春期を迎え、妊娠、出産。そして老年期へと移っていく節目として閉経があります。この移行期に当たる閉経前後の5年間、都合10年間を一般に更年期と呼んでいますが、この頃にいろいろな体調不良を訴えてくるのを更年期障害といいます。

 更年期障害は皆さんご存じのように、卵巣から分泌される女性ホルモンの分泌量が、急激に低下するのが原因です。とくに影響が強いのが、「エストロゲン」。およそ人体というのは急激な変化には弱いものなのです。年末の休みに常夏のハワイから帰ってきて、そのまま北海道の富良野へスキーに行くようなもので、風邪をひくのが関の山。だって、フラダンスの国からフラノだもん、フラフラになるのも当たり前だ

 ではどんな症状が出るかというと、精神的な症状として、うつうつとした気分でどうも元気が出ない、怒りっぽくなったりイライラしやすい。他にも不眠、肩こり、疲労感、関節痛、さらには自律神経失調が加わるから、冷える、のぼせる、妙に汗をかく、動悸やめまいがする、などなど…きりがないね。

 とくに最近増えているのが、うつ症状。これは特別に「更年期うつ」と呼ばれています。それでなくても女性は男性より2倍うつになりやすいと言われています。

 でもね、男性にだって更年期障害はあるんですよ。男だって女性ほどではないけれど、急激に男性ホルモンが低下する時期があるんです。頭がぼーっとして集中力も無くなればうつにもなる、さらに性欲低下もくるんです。上も下も元気がなくなるのが男の更年期。「どうも元気ないなあ、歳取ったのかなあ」とうつむきながらぼやいてるお父さん、それ、歳のせいじゃなくて、更年期障害によるうつ症状かもよ。

どうせテレビを見るならば

 やっぱりさ、中高年なんて呼ばれる歳になったら、うつの予防くらいはしたいもの。なにも特別なことすることないの。一番効果的なのが運動。運動はうつの予防にも治療にも良いことは昔から知られています。え、「休みの日はずっとテレビ見てる。最近は暗いニュースばっかり」ってねえ、それじゃもっとうつになるでしょうよ。

 面白い研究があります。ハーバード公衆衛生大学院が、運動量とテレビを見ている時間、それらとうつとの関係を調査したんですね。対象は60代なかばの女性ばかり5万人ほどで、10年間追跡調査したんですね。その結果、運動量が最も多い(90分以上/日)女性は、最も少ない(10分未満/日)女性に比べ、うつ病の発症リスクが20%低かったそうです。

 さて、これにテレビの影響が加わると、どうなるでしょうか。運動量が最も多くテレビの視聴時間が短い(0~5時間/週)女性は、運動量が最も少なくテレビの視聴時間が最も長い(21時間以上/週)女性に比べ、うつ病の発症リスクが38%も低かったんです(*1)。

 テレビを見て運動しないで、うつうつとしてる人いませんか。とくに更年期には、テレビの見過ぎはうつを助長するかもしれませんよ。え、「テレビショッピングと韓ドラさえあれば私は元気でいられるのよ」、失礼しました。でもたまにはらく朝の番組も見てちょうだいよ、「Dr.らく朝笑いの診察室」(毎週月曜の夜8:54から、BS日テレ)。だって、たったの6分だもん。

*1 Michel Lucas, et al. Relation Between Clinical Depression Risk and Physical Activity and Time Spent Watching Television in Older Women: A 10-Year Prospective Follow-up Study. Am J Epidemiol. 2011;174(9):1017-27.
らく朝築地独演会のお知らせ
築地本願寺ブディストホール(東京)
第34回 2015年11月9日(月)19:00開演
第35回 2015年12月15日(火)19:00開演
お申込みはオフィスらく朝(03-6661-8832)、詳細はHPで。

BS日テレ毎月曜日「Dr.らく朝笑いの診察室」放送中。
ラジオNIKKEI第3土曜日「大人のラヂオ」パーソナリティ。
立川らく朝(たてかわ らくちょう)
落語家(医学博士)
立川らく朝(たてかわ らくちょう) 1954年1月26日、長野県に生まれる。1979年、杏林大学医学部卒業。慶応義塾大学医学部内科学教室へ入局。主として脂質異常症の臨床と研究に従事。慶応健康相談センター(人間ドック)医長を勤める。
2000年、46歳にして立川志らく門下に入門、プロの落語家として再出発する。
2004年、立川流家元、立川談志に認められ二つ目昇進。医学博士でもある立場を生かし、健康教育と落語をミックスした「ヘルシートーク」、「健康落語」、「落語&一人芝居」という新ジャンルを開拓。マスコミなどで評判となり全国での公演に飛び回る毎日。また「健康情報を笑いを交えて提供する」というコンセプトで全く新しい講演会を精力的に開催。2015年10月1日付で真打昇進。笑いと健康学会理事。日本ペンクラブ会員。公式HPはこちら
(写真:増田伸也)