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立川らく朝の「わかっちゃいるけど…」

昼下がりの悪夢

睡眠時無呼吸症候群のはなし

 立川らく朝

健康に気をつけるべき、体に悪い習慣は改めるべき、とわかっていても、「そんなの無理だよ、できないよ」というのが、日々忙しく働く人たちのホンネ。落語家であり医学博士でもある立川らく朝さんが、現代社会に生きるビジネスパーソンへの共感を込めてつづる健康エッセイ。読んでほっこり癒されて!

(イラスト:つぼいひろき)

「夕べは一睡もできなかったよ」

「ええっ! 一睡も?」

「そう、その上最悪でさ、一晩中悪夢にうなされたんだ」

「じゃあ、寝たんじゃん」

人間ドミノ

 電車の座席に座ると、みんなやることは同じだね。まずはスマホのチェック、それが終わると次はとりあえず寝る。以前、私の目の前の座席で、手にスマホを持ったままぐっすり熟睡してる人がいた。スマホを持った片方の手がダラリと下がって、「お、落とすかな」と思ったが落とさない。「いつ落とすだろう」と、期待を込めて今か今かとずっと見ていたら、うっかり乗り過ごしちゃった。

 昼下がりの電車で「全滅」ってときもあった。座ってる人、一列全員見事に熟睡してる。思わず考えたね。座席の一番端に座っている人を横からちょいと突いたら、次から次へ、全員が横倒しにバタバタっと倒れるだろう。人間ドミノだ。その姿を想像しながら思わずクククって…昼間から何やってんだ、俺。

不眠は早死にのもと

 今や日本人の5人に1人、60歳以上では約3人に1人は不眠状態だ(*1)。これだけ睡眠不足の人が多いと、早死にする人が増えるかもしれない。

 慢性的(1年以上)に不眠症がある男性を14年間追跡調査したところ、睡眠時間が6時間未満の人は、死亡率が51.1%だった。それに比べて、毎日6時間以上睡眠をとる人の死亡率はたったの9.1%だったという(2010年)(*2)。あなた、毎日6時間以上、眠ってますか?

 不眠になる代表的な病気が「睡眠時無呼吸症候群」。夜中に呼吸が止まる病気だ。もっとも呼吸が止まると言っても、朝まで止まってるわけじゃない。朝までずっと呼吸が止まってたら、昼間は決して不眠にはならない、こういう時は、永眠となる

 10秒以上呼吸が止まることを「無呼吸」といって、これが夜中に何度も起きるのが睡眠時無呼吸症候群だが、1時間に5回以上、あるいは一晩に30回以上無呼吸がある場合、という診断基準がある。私の友達が病院で検査をしたら、もうちょっとでこの診断基準に満たなくて、医者に言われたそうな、「いやあ、残念、もう一息でした」

 睡眠時無呼吸症候群は、昼間にひどく眠くなり、運転中に交通事故を起こすケースがとても多い。そればかりではなく、高血圧や糖尿病になるリスクが高く、心筋梗塞の発症率も高い。

 心筋梗塞ばかりではない。不眠症患者を対象にした調査の結果、不眠症の人では脳卒中のリスクが54%増加するという報告もある(2014年)(*3)。なぜ不眠がこんなにも危険かというと、寝ているときは安静状態を維持する副交感神経が活躍するが、不眠になると、ストレス状態で興奮する交感神経が活動してしまう。交感神経は闘いに備えて血圧を上げ、血糖値を上げてしまう。24時間闘える身体って、実は早死にする身体なのだ。

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