日経グッデイ

立川らく朝の「わかっちゃいるけど…」

命懸けの朝ご飯

朝ご飯を抜くと脳出血に

 立川らく朝

健康に気をつけるべき、体に悪い習慣は改めるべき、とわかっていても、「そんなの無理だよ、できないよ」というのが、日々忙しく働く人たちのホンネ。落語家であり医学博士でもある立川らく朝さんが、現代社会に生きるビジネスパーソンへの共感を込めてつづる健康エッセイ。読んでほっこり癒されて!

(イラスト:つぼいひろき)

広島行きの飛行機が強風で欠航、急遽新幹線で行こうと東京駅に。しかしキップ売り場は長蛇の列、ようやくキップを手にして、

「よし、全力疾走で階段を上って。まずい、発車の合図が鳴ってる…ああ間一髪間に合った、良かった。これ逃したら、遅刻するところだった」

新幹線のデッキでゼーゼーいっていると、通りかかったのが車掌、

「お客さん、間に合って良かったですねえ」

「そうなんです、これが最後の、“のぞみ”だったんです

 私なんかは出張が多いものですから、新幹線には本当にお世話になっております。今では新幹線通勤なんてものがあって、便利な世の中になりました。でも昔も昔、まだ「国電」と呼んでいたあの頃、当時の通勤ラッシュの凄さを「酷電」と揶揄していた時代がありました。でも今だって通勤の大変さは変わらないですよ。1時間半も2時間もかけて通勤するお父さんたちってザラにいます。朝なんか早く家を出るから朝ご飯を食べる暇がない。そんな時は、駅のホームのサンドイッチコーナーで済ませたりしてるお父さんだっているんですね。

 のんびり食べてるわけじゃないんですよ。なんとか電車が来るまでに食べ終わりたい、でもそうもいかないんですね。食べてる途中で通勤快速が来ちゃった。でもサンドイッチは食べかけ。それでも食べ残すのも嫌だから、ぎりぎりまで食べてるわけ。通勤快速がホームに止まってドアが開いても、まだ食べてる。じゃあいつ電車に乗るんだっていうと、電車の扉が閉まる寸前、食べかけのサンドイッチを片手に満員電車の中に飛び込むんです。そうすると乗ったとたんに、お父さんの背中でドアがバーと閉まって、もう間一髪。こんな綱渡りをやってんですよね。毎朝毎朝、綱渡りしながら、食べてるサンドイッチが「ツナサンド」だったりなんかして。やっぱり朝は、もう少しのんびりしたいものです。

朝ご飯を食べないと脳出血

 朝ご飯は大切だ、とはよく言われます。でもそう言われてもねえ。夜が遅けりゃ寝るのも遅い、そうなりゃ朝が眠いのは道理です。でも朝食べないで、空腹状態で仕事に突入、「お腹がすいたなあ」なんてお昼まで我慢してるってのはあまり良いことではないんですね。実は、朝ご飯を食べない人は脳出血を起こしやすい、というデータが発表されました。

 国立がん研究センターなどの研究チームが、45~74歳の男女約8万人を平均13年もの間追跡調査したんですね。いったい何を調べたかというと、毎日朝ご飯を食べない人はどのくらい脳出血になっているかということなんです(*1)。

 なんでこんな変わった調査をしたかというと、朝ご飯を食べないとイライラするでしょ。そうするとそれがストレスになって血圧が上がる。高血圧というのは脳卒中の大きな原因、じゃあ朝ご飯を食べる習慣のない人は脳出血が多いんじゃないかって、考えてみればごく自然な発想ですよね。

 さあ、それではどんな結果になったでしょうか。まず、1週間に朝食を取る回数別に、0~2回、3~4回、5~6回、毎日、の4つのグループに分けたんですね。それぞれについて調べたところ、驚くなかれ、朝ご飯の回数が少ない人ほど、脳出血の危険度が高いということが分かったのです。どのくらい高いかというと、朝ご飯を一週間に0~2回しか取らない人たちは、毎日食べる人に比べて36%も脳出血の危険度が高かったんですって。

 0~2回というのは、ほぼ食べない、という人たちですよね。この連載の読者の中にもそんな方は多いのではないでしょうか。そんな方たち、この記事を読んでストレス感じて血圧を上げないように、ここで一回深呼吸しましょうね。はい、ハー。

電車の中の怪しい男

 さて、それでは週3~4回朝ご飯を食べるという人たちではどうだったでしょうか。そんな方も結構多いと思いますが、結果は脳出血の危険度が22%、また週に5~6回の人は10%高かったというデータが出ました。ちなみに、朝ご飯の回数と脳出血との関係を調べたのは、これが世界初なんですって。

 やっぱり朝ご飯は大切だったんですね。私も仕事で朝出掛ける時なんか、結局何も食べずに家を飛び出すことも多いんですよ。以前、朝食抜きでやったラジオの本番中に、お腹が「グー」と鳴ったことがある。あれは焦りました。収録後、担当のディレクターが「今日は良かったですよ、グーでしたね」って、それは皮肉か。ああ、朝ご飯、食べてくれば良かった。

 それ以来、朝ご飯を食べる暇がないと、移動中にパンやお握りを食べちゃうんです。歩きながらとか、電車の中でこっそり、とか。もし電車の隅っこで、人目をはばかりながらサンドイッチを頬張ってる怪しい男がいたら、それは私かもしれません。そんなときは皆様、どうか話しかけないで、放っておいてくださいね。だって突然「らく朝さん」なんて呼びかけられたら、私びっくりして脳出血を起こすかも。ああ、こうなると、電車の中で朝ご飯食べるのも命懸けだ。

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らく朝築地独演会のお知らせ
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第42回 2016年6月6日(月)19:00開演
第43回 2016年8月19日(金)19:00開演
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BS日テレ毎月曜日「Dr.らく朝笑いの診察室」放送中。
ラジオNIKKEI第3金曜日「大人のラヂオ」パーソナリティ。
立川らく朝(たてかわ らくちょう)
落語家(医学博士)
立川らく朝(たてかわ らくちょう) 1954年1月26日、長野県に生まれる。1979年、杏林大学医学部卒業。慶応義塾大学医学部内科学教室へ入局。主として脂質異常症の臨床と研究に従事。慶応健康相談センター(人間ドック)医長を勤める。
2000年、46歳にして立川志らく門下に入門、プロの落語家として再出発する。
2004年、立川流家元、立川談志に認められ二つ目昇進。医学博士でもある立場を生かし、健康教育と落語をミックスした「ヘルシートーク」、「健康落語」、「落語&一人芝居」という新ジャンルを開拓。マスコミなどで評判となり全国での公演に飛び回る毎日。また「健康情報を笑いを交えて提供する」というコンセプトで全く新しい講演会を精力的に開催。2015年10月1日付で真打昇進。笑いと健康学会理事。日本ペンクラブ会員。公式HPはこちら
(写真:増田伸也)