健康に気をつけるべき、体に悪い習慣は改めるべき、とわかっていても、「そんなの無理だよ、できないよ」というのが、日々忙しく働く人たちのホンネ。落語家であり医学博士でもある立川らく朝さんが、現代社会に生きるビジネスパーソンへの共感を込めてつづる健康エッセイ。読んでほっこり癒されて!

「おい、今日は一緒にヤケ酒だぞ」
「いいけどさ、俺、糖尿病だろ、血糖値が心配だなあ。せめて和食で飲もうぜ」
「じゃあ駅前の回転寿司にしようか」
「あそこは駄目だ」
「どうして、寿司屋なら和食だろうよ」
「いや、あそこの魚はほとんど、
ストレス解消に何をするか、人によって違いますよね。多いのが「とにかく飲む」という方と、「とにかく食べる」という方。だいたい飲む派と食べる派に分かれるんだそうです。どちらも肥満のもとですが、ストレスで心がボロボロになっている時に、お腹の脂肪のことなんか気にしてらんないですよ。
え、私? 私はやっぱり飲む派ですね。ある日「もう誰とも会いたくない、喋りたくもない、一人でひたすら飲みたい」、そんな気分で飲み屋でヤケ酒を飲んでいたんですね。こんな私にだって辛い時はあるんです。すると、「あれ、らく朝さんじゃない」と元気に声をかけられました。偶然にも知り合いに会ってしまったのです。「え、うそ、こんな時に限ってなんで」と思ってもすでに手遅れ。相手は数人でニコニコしながら近づいてきて、「ねえねえ、みんなもこっちに来て一緒に飲もう」と勝手に友達を誘います。落ち込んでヤケ酒飲んでるその最中、ついに私は、陽気な飲み会の輪の中に無理矢理入れられてしまいました。
私も落語家の端くれ、いつのまにかその場の盛り上げ役をしていました。頑張って冗談を言って笑わせて、その挙げ句に何て言われたと思います、「らく朝さんってホント、ストレスなくていいわねえ」。
その帰り、もう一度飲み直す気力も何もなくなって、ただただストレスにまみれながら、フラフラと帰宅して「ふて寝」したのを覚えています。
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