たくさん血を採る病院
誰でも「できれば採血なんかしたくない」と思うでしょうが、採血をしないと分からない情報ってたくさんあるんですね。とにかくいっぱい血を採ることで有名な病院がある。行くと必ず、いっぱい血を採られる。どこにある病院かと見たら、千鳥(チドリ)ヶ淵だった…そういえばここ、桜の名所だね。
さて、血液を見ないと分からないものの一つに血糖値があります。これが糖尿病の指標になることはみなさんご存知です。空腹時の血糖が110(mg/dL)未満が正常、これが126以上になると糖尿病と診断されます。血糖値がその中間の、正常でもないし糖尿病でもないという境界域にある場合は、境界型糖尿病、あるいは糖尿病予備軍とも呼ばれています。
予備軍っていうと、なんか2軍みたいで、あまり大したことはないように思えるでしょ。皆さんだって、健康診断で「あなたは糖尿病予備軍です」なんて言われても、「なんだ2軍か、どうってことないや」なんてね。「せいぜい気を付けますわ」てなもんですよ。気持ちはわかるんですけど、あんまり油断をしてもねえ。
実は、糖尿病予備軍の人は、がんになるリスクが高いんです。「え、糖尿病とがん、関係ないだろ」って、そう思いがちですよね。でも本当なんです。
日本には、「JPHC研究」(*1)というのがあって、これは日本人でのさまざまな生活習慣病を調査するための研究ですが、糖尿病とがんのリスクがどのような関係にあるかという調査もしているのです。
調べたのは、実は血糖値ではなくて、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)とがんとの関係です。HbA1cは、過去1カ月から2カ月くらいの血糖値の平均値を表した指標で、この値が高いほど、糖尿病は進行しているといえます。
さて、このHbA1cの値と、がんの発症リスクがどういう関係にあるかを調査しました。どうなったと思います、ご想像の通り、HbA1cの値が高いほど、がんの発症リスクは上がることが分かったんですよ(*2)。
*2 国立がん研究センター. ヘモグロビンA1c(HbA1c)とがん罹患との関連について-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告-. http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3753.html
- 次ページ
- 採血は誰にしてもらう