日経グッデイ

立川らく朝の「わかっちゃいるけど…」

お洒落に骨を強くする方法

女子会やるなら何にする

 立川らく朝

健康に気をつけるべき、体に悪い習慣は改めるべき、とわかっていても、「そんなの無理だよ、できないよ」というのが、日々忙しく働く人たちのホンネ。落語家であり医学博士でもある立川らく朝さんが、現代社会に生きるビジネスパーソンへの共感を込めてつづる健康エッセイ。読んでほっこり癒されて!

(イラスト:つぼいひろき)

「主任、だから老人ホームで運動会するのはやめようって言ったんです。捻挫したり転んで怪我した人とかいっぱい出て、スタッフみんな大変だったんですよ」

「いやあ、みんなご苦労だった。しかし、骨折者が一人も出なくて良かった」

「なに言ってんですか主任、スタッフ全員、どんだけ骨を折ったか

 歳をとってから怖いのが、転んで骨を折ってしまうことですよね。年齢と共に骨は弱くなるものですが、その最大の原因は骨粗鬆症です。転んだ時に起きる骨折で一番怖いのが、大腿骨頸部骨折。これは足と胴体(骨盤)とを繋いでいる部分(大腿骨頸部)が折れてしまうので、まず歩くことはできない。ほとんどが手術することになる上に、寝たきりの原因の上位にもなっています。

 でもね、日本人って、欧米の人に比べると大腿骨頸部骨折は少ないんです。どうしてかというと、日本人は足が短いから転んでも落差がない、だから衝撃が弱くて骨も折れない…嘘ですよ。そんなわけないでしょうよ。実は日本的なライフスタイルが良いらしいんですね。

 日本人は畳の生活をするから、しょっちゅう立ったり座ったり。しかも朝晩は布団の上げ下ろし、こんな動作がすべて足の付け根にある大腿骨頸部に負荷をかけることになります。これがいいんですよ。だって、負荷がかかると骨は強くなるんです。

 でも最近は椅子やベッドの生活が多いでしょ。ベッドばかりがフカフカで、骨にはフカがない。こんな状態が続くと、日本人にも大腿骨頸部骨折が増えるかもしれないですね。

 だからね、ベッドの人も朝晩布団の上げ下ろしをするといいんですよ。でも洋室には押し入れがないから、布団を玄関まで運んで下駄箱の上に置いて、ってなにもそこまでしなくてもいいけど、毎日の運動の積み重ねは骨粗鬆症の予防には大切なんですね。「そんな暇はない」、いえ、少しずつでいいんです。だって骨のことなんですから、コツコツやるのが宜しいようで。

骨粗鬆症だってお洒落に予防

 骨粗鬆症の予防には、カルシウムやビタミンDを十分に摂ることが効果的です、なあんてね。「そんなことは分かってるけど、いちいち気にしながら食べてらんないよ」、ごもっとも、ごもっとも。「やっぱり食事は楽しく、お洒落でなくちゃ」って、そうですよね。じゃあねえ、皆さん大好きで、しかもちょっとお洒落な、地中海料理なんてのはどうでしょうか。

 地中海料理は、ニンニクや緑黄色野菜が豊富で、しかも魚貝類が中心。さらに豆類、ナッツ類をよく用いて、脂肪分のほとんどはオリーブオイル。こんな特徴があるためか、心臓病を予防する、がんや認知症を防ぐなどとすこぶる評判が良いのです。それだけじゃないんですね、最近では骨粗鬆症の予防にも効果があると注目されています。実際に地中海料理を食べている人達には骨粗鬆症が少ないことが知られているんです。

 実は、骨というのは壊されたり(骨吸収)造られたり(骨形成)を常に繰り返していますが、骨を作る細胞(骨芽細胞)がどんどん骨を作る時には、オステオカルシンという物質が作られます。この血中濃度は骨形成の指標となると考えられていますが、オリーブオイルが豊富な地中海式の食事を続けている人たちは、血中のオステオカルシンが上昇していることがわかりました(*1)。

 この結果は、スペインの約200カ所の医療機関で実施されている、地中海食による予防研究(PREDIMED)によって報告されました。スペイン料理大好きという方、多いかも。私も大好物で、オリーブオイルとニンニクでシンプルに仕上げたマッシュルームには目がなくて、ついワインを飲み過ぎちゃう。でもさ、闘牛の国の料理だけに、あまり飲み過ぎると、奥さんにも角が生えるから気を付けた方が良いかもよ。

骨の量が増える飲み物

 ところで、地中海料理のあとは何を飲みますか。え、「食後はやっぱりブランデー」、そうじゃなくて。食後はコーヒーか、人によってはエスプレッソという方もいるのでしょうが、ここは一つ、紅茶といこうじゃありませんか。

 大阪大学免疫学フロンティア研究センターの研究グループは、紅茶のテアフラビンという成分が骨粗鬆症を改善することを発表しました。なんでも遺伝子に作用することで骨吸収を抑制するとのこと。骨粗鬆症にしたマウス(可哀想だなあ)に、テアフラビンを3週間投与したら、骨の量がほぼ正常に回復しました(*2)。すごいでしょ紅茶って。

 骨粗鬆症はなんといっても女性に多い病気。女子会やるなら地中海料理、そして最後のシメは紅茶。でもね、この効果を得るためには、紅茶を一日に20杯飲む必要があるんですって。「今さらそんなこと言う?」、まあいいじゃないの。一日中ティーバッグを持ち歩いていれば可能かもよ。え、「私は毎日Tバック」って、それは下着の話だ。

らく朝築地独演会のお知らせ
築地本願寺ブディストホール(東京)
第40回 2016年4月18日(月)19:00開演
第41回 2016年5月17日(火)19:00開演
お申込みはオフィスらく朝(03-6661-8832)、詳細はHPで。

BS日テレ毎月曜日「Dr.らく朝笑いの診察室」放送中。
ラジオNIKKEI第3土曜日「大人のラヂオ」パーソナリティ。
立川らく朝(たてかわ らくちょう)
落語家(医学博士)
立川らく朝(たてかわ らくちょう) 1954年1月26日、長野県に生まれる。1979年、杏林大学医学部卒業。慶応義塾大学医学部内科学教室へ入局。主として脂質異常症の臨床と研究に従事。慶応健康相談センター(人間ドック)医長を勤める。
2000年、46歳にして立川志らく門下に入門、プロの落語家として再出発する。
2004年、立川流家元、立川談志に認められ二つ目昇進。医学博士でもある立場を生かし、健康教育と落語をミックスした「ヘルシートーク」、「健康落語」、「落語&一人芝居」という新ジャンルを開拓。マスコミなどで評判となり全国での公演に飛び回る毎日。また「健康情報を笑いを交えて提供する」というコンセプトで全く新しい講演会を精力的に開催。2015年10月1日付で真打昇進。笑いと健康学会理事。日本ペンクラブ会員。公式HPはこちら
(写真:増田伸也)