ずぼら人間の惚け予防
さあ、何とかこの認知症、遠ざけたいじゃありませんか。昔から、運動することは惚け予防になるといわれています。それを裏付ける研究結果もたくさんあるんですが、皆さんの中には運動嫌いの人もけっこう多いですよね。「惚けたくないけど運動もヤダ」なんていうワガママな人、誰とは言いませんが、ちょっと耳寄りな話があるんですよ。
運動嫌いな人に無理矢理に激しい運動させてもストレスの元になるもの。でもね、どんな運動嫌いでも、軽い運動ならストレス発散になるじゃないですか。これは筑波大学が東京大学の協力を得て調査した結果で、「米国アカデミー紀要(PNAS)」にも掲載されたのですが、ストレスを伴わない程度の軽い運動で、海馬の神経新生が高まることを発表したんです(*1)。記憶を司るとても大切な海馬の神経細胞が、ストレスを感じない程度のごく軽い運動で増えちゃうなんて、ずぼら人間には朗報じゃないですか。
ただね、認知症というのは高齢になってから出てくるもの。だったら高齢者にとっても運動の効果がないとつまらない。歳取ったらもうお手上げ、っていうんじゃあまりにも愛想ないもんね。ところが、80歳以上になってもなお、運動には認知症予防の効果があるらしいんです。
もっともね、高齢になるとそうそう運動はできないですよ。でも、ウォーキングくらいはできるし、日常の掃除や料理などの家事でもそこそこの運動にはなるわけです。じつはこの程度の運動量でも、アルツハイマー病の発症を予防できるらしいんですよ。
これは、なんと平均年齢82歳の人たち716人を、3~4年間追跡調査して分かったのですが、毎日の運動量、というよりはこの場合、身体活動の量と言った方が適当だと思うけど、それを綿密に調べて活動量によってグループ分けするんですね。そうすると、活動量が下位10%のグループでは、上位10%のグループに比べて、アルツハイマー病を発症する割合が2.3倍多かったのだそうです。また、身体活動の強度で調べても、下位10%のグループでは上位10%のグループに比べ、アルツハイマー病の発症が2.8倍に上昇していたんですって(*2)。
物忘れに怯えているより、いくつになっても楽しく汗を流す。やっぱりこれが一番でしょうね。それに惚け予防にはやっぱり頭を回転させたいもの。そうすると、頭と身体と両方使う趣味を持つのが理想的。私思うんですけど、ゴルフなんかいいですよ。ものぐさなあなたは、チンタラゴルフで十分。だってゴルフはクレバーなスポーツといわれて、頭と身体と両方使うんです。とくにプロはそうですね。プロの試合はバカじゃ勝てないんですよ。だって、プロの試合は、パーじゃ勝てない…あれ、ちょっと意味が違うかな。
*2 Buchman AS, et al. Total daily physical activity and the risk of AD and cognitive decline in older adults. Neurology. 2012;78(17):1323-9.
第27回 2015年3月10日(火)19:00開演
第28回 2015年4月13日(月)19:00開演
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ラジオNIKKEI第3土曜日「大人のラヂオ」パーソナリティ。
落語家(医学博士)

2000年、46歳にして立川志らく門下に入門、プロの落語家として再出発する。
2004年、立川流家元、立川談志に認められ二つ目昇進。医学博士でもある立場を生かし、健康教育と落語をミックスした「ヘルシートーク」、「健康落語」、「落語&一人芝居」という新ジャンルを開拓。マスコミなどで評判となり全国での公演に飛び回る毎日。また「健康情報を笑いを交えて提供する」というコンセプトで全く新しい講演会を精力的に開催。2015年10月1日付で真打昇進。笑いと健康学会理事。日本ペンクラブ会員。公式HPはこちら。
(写真:増田伸也)