その言葉は、ある日不意に言い渡される-「がん」。耳にした瞬間、多くの人は「死」を初めて実感し、自分の「命」を改めて認識するようになるという。今や日本人のおよそ半分が、なんらかのがんにかかる時代。人生、家族、仕事…。がんをきっかけに診療室で繰り広げられる人間模様とともに、がん治療の最前線を歩み続ける医師が語る、現代人に伝えたい生き方の道しるべ。
「対策型検診」では見つけることが難しいがんもある
胆管がんで亡くなった女優の川島なお美さんをはじめ、肺がんだった俳優・タレントの愛川欽也さん、大腸がんだった俳優の今井雅之さん、胃がんだったフリーアナウンサーの黒木奈々さん、直腸がんだった日本相撲協会の北の湖前理事長、膵臓がんだった歌舞伎役者の板東三津五郎さんなど、今年もたくさんの著名人の訃報に接しました。
この連載でも常々お伝えしてきたように、もしもがんに罹患したら、その後の進行のカギを握るのは「早期発見」「早期治療」です。そのために欠かせないのが「がん検診」です。しかし、自治体で受けられる自己負担が少ない「対策型検診」では見つけることが難しいがんもあるのです。
シリーズでご紹介している『現実的な「がん検診」の選び方』。最終回では、前立腺、食道、咽頭といった症例の少ないがんについて、取り上げたいと思います。
これらのがんは、前回までに取り上げてきたがん(第1回/胃がん・大腸がん・肺がん、第2回/肝がん・胆管がん・膵がん、第3回/乳がん、子宮がん、卵巣がん)と比べて発症は少ないのですが、それだけに、発症原因の特定や検査方法は、まだまだ発展途上。自己負担で任意の検診を受けるしかありません。
となると一人ひとりに問われるのは、どこまで検査をするかです。当クリニックに検診に訪れる方には、「何がなんでもがんから我が身を守りたい」という方もいれば、「特定の部位のがんを発症した近親者がいる」という理由の方もいます。
いずれにしても、どこまで発症例が少ないがんへの対策を考えるかについては、本人の人生観や命に対する考え方にかかわっているといっても過言ではないでしょう。
それでは、発症例が少ないがんのいくつかについて具体的に説明していきましょう。