その言葉は、ある日不意に言い渡される―「がん」。次の瞬間、多くの人は「死」を初めて実感し、我が人生を改めて振り返る。今は日本人のおよそ半分が、なんらかのがんにかかる時代。がんをきっかけに診察室で繰り広げられる人間模様とともに、がん治療の最前線を歩み続ける医師が綴る、現代人に贈る生き方の道しるべ。
川島なお美さんを襲った「肝内胆管がん」
女優の川島なお美さんが、9月に54歳の若さでお亡くなりになりました。すでに報道などでも発表されている通り、肝臓の中に通る胆管にできた肝内胆管がんだったことは、皆さんもご存じのことでしょう。人間ドックの検診で発見されたときには、かなり進行していたとも聞きます。知名度の高い方のがん報道というのは、世の中に与える衝撃が大きいことを改めて知るとともに、やはり、大変残念なことに思います。
今や国民の2人に1人が何かしらのがんにかかる時代(参照記事:『「2人に1人ががんになる」という意味』)の対策は、「早期の発見と治療に限る」ということを、この連載でも常々お伝えしてきました。
前回(参照記事:『がん専門医が薦める、現実的な「がん検診」の選び方 』)ご紹介した「3大がん(胃がん、肺がん、大腸がん)」を早期に発見するための現実的な検診の受け方に続いて、今回は「肝がん」「胆管がん(胆嚢がん)」「膵がん」について取り上げることにしましょう。
近親者が「肝胆膵」の病気を持つ人はぜひ検診を
まず、「肝胆膵(かんたんたすい)」と3つにくくられて呼ばれるこれらのがんは、前回ご紹介したがん検診とは違い、自治体などで受けられる「対策型検診」には含まれていません。つまり、検診を受けるには、人間ドックやがん総合検診などの「任意型検診」で対応しなければなりません。費用が自己負担であるために、受検者が少ないのが現状です。
いずれも「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり進行するまで自覚症状がほとんど出ない傾向があります。また、比較的初期に発見できたとしても、現代の医療では、まだまだ難治性が高いとの問題も抱えています。つまり、「肝胆膵」に発症したがんは、とても厄介な疾患の代表でもあるのです。
するとまず、「どんな人が受けるべきなのか」という疑問が浮かぶに違いありません。がん専門医の立場から助言するならば、「直系の近親者が肝胆膵の病気を持っている(持っていた)」「とにかくがんは徹底的に防ぎたい」という条件に当てはまる人は、定期的に検診を受けることをお薦めします。