テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! 講演会のために、列車で岡山から米子を目指した良純さん。2018年の西日本豪雨で被害を受けた倉敷市真備町を通りながら、考えたのは豪雨や大雪といった異常気象のこと。最近の季節はずれの大雪は、良純さんの旅の予定にも少なからず影響を与えたようです。
「特急やくも」に乗って、岡山から米子を目指す。先頭車両は運転席がガラス張りのワイドビュー車両。4人しか車両に乗客がいないのを見計らった僕は、荷物を持って先頭席にそそくさと移動した。

米子までの2時間半、東野圭吾のマスカレードシリーズ第3弾、『マスカレード・ナイト』を読んでやろうか、それとも、自粛期間以来の恒例となった『ラジオ英会話』の教本を読み進もうか。到着後、すぐに始まる講演会の準備もしなければいけないし、昼寝したい気もするし。でも、眼の前に延びる2本のレールを眺めたら、そんな迷いは一掃されてしまった。
13時05分発「やくも13号」は岡山駅を出ると、同時刻発車の瀬戸大橋を渡って高知を目指す「南風11号」と併走する。僕らが走る山陽本線の線路と南風号の宇野線の線路の間には、留置線(*1)に真っ黄色のいわゆる山陽色の電車がズラリと並んでいる。南風号は大きく左に弧を描くと僕らの頭上を立体交差して瀬戸内海へと向かっていった。僕の大好物ばかり。旅の始まりからして、僕のワクワクは止まらない。
46年ぶりに伯備線に乗って
倉敷駅を出発すると列車は山陽本線を離れ、大きく右にカーブして中国山地を目指す。
僕が伯備線に乗るのは、中学入学を控えた春休み以来だから46年ぶりのこと。中学校の地理の期末テストで、鳥取と岡山を結ぶ路線は、という難問に答えられたのはその時の体験があってのこと。旅の楽しい思い出とともに、鉄道ファンとして難問に正解できた誇らしさは、僕にとって伯備線を忘れられないものにした。
山陽新幹線の高架橋と交差するあたり、伯備線は大きな河川敷に沿って走る。左手に流れるのは高梁(たかはし)川。ほどなく川の流れは、高い堤防に遮られ見えなくなってしまった。
川の対岸、高梁川の本流と支流の小田川とが合流するあたりが倉敷市真備町だ。すぐにグーグルマップで確認する。列車に乗ったら自分の位置を常に確かめる、これ鉄道マニアの常識。
真備町は2018年の夏の西日本豪雨で大きな被害を受けた地域として記憶に新しい。今も未だ復旧作業が続いているのだろう。時折、高い堤防越しに土色の工事現場が見えた。
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