テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! 12月に伊勢神宮を訪れた石原さん。“お伊勢さんの大ファン”である石原さんは、実は37年連続で12月にお参りしています。ピンと冷たい空気が張り詰めた伊勢神宮の朝は、石原さんをちょっとだけ哲学者にしたようです。
冬至の日、毎年恒例のお伊勢参りに出かけた。12月は、最もお伊勢さんが空いている。初詣にどっと人が押し寄せる1月直前の12月が一番の狙い目なのだ。だから僕は、37年連続して12月にお伊勢参りに出かけている。
弥次さん喜多さんが旅をした江戸時代には、お伊勢参りは庶民にとって一生に一度の楽しみ。長いこと家業を休んででも、東海道の旅をゆっくり楽しんだのだろうが、お伊勢さんは今も東京からなかなか遠い。
新幹線で東京から名古屋まで、約1時間40分。さらに近鉄特急に乗り換えて、伊勢市駅まで1時間半。近鉄特急の車窓の景色は、木曽三川を渡れば、右手に鈴鹿山脈、でも左手に海は見えない。あとはひたすら長閑(のどか)な田園風景が広がる。カラカラに乾いた田んぼが冬の陽の光に黄金色に輝く。これぞ正しく日本の原風景だ。

しかし、37年間も見続けてくれば、日本の原風景にもいささか飽きてもくる。だから近年は、名古屋や大阪での仕事帰りに伊勢市内のホテルに前泊することにしている。1日で東京と伊勢を往復するのは腰にも悪い。お伊勢参りで腰痛が再発しては、一年の締めくくりがめでたくなくなる。
お伊勢参りの朝は、早ければ早いほど清々(すがすが)しい。ピンと冷たい空気が張り詰めた無人の境内を、ザッザッと小石を踏みしめて歩くのが心地良い。
今年は前夜、名古屋でテレビ愛知の『サンデージャーナル』の収録後、忘年会があったので少し出遅れ気味のスタートとなった。それでも8時にはホテルを出発。JR鳥羽線の踏切を渡って少し歩けば、外宮の参道に出る。
参道でまず目にとまるのが、昔ながらの佇(たたず)まいをそのまま残す旅館「山田館」。なにしろ伊勢といえば昔は日本一の観光地。時代の最先端をいく瀟洒(しょうしゃ)な旅館が参道に軒を連ねていたに違いない。
山田館は目新しくペンキは上塗りされているものの、建物は昔のままだ。長い年月を経て、屋根のラインは微妙に上下にたわみ、建物自体が僅(わず)かに道路へ前のめりに傾いているようにも見える。
並びの土産店もこれまた昭和の佇(たたず)まい。それも戦前の景色。御主人とおぼしきおじいさんが、朝も早から開店準備で商品をバタバタとはたきで叩いていた。
参道終わりの大きな横断歩道は要注意だ。朝は押ボタン式になっているから、誰かが赤いボタンを押さねばいくら待っても信号は変わりやしない。僕が気が付いて、信号待ちの観光客の大勢さんを助けることになった。
お伊勢さん、伊勢神宮の正しい名称は「神宮」なのだそうだ。神宮とは皇大神宮(内宮)と豊受大神宮(外宮)の総称で、両正宮には別宮、摂社、末社など125の宮社がある。せっかく伊勢までやって来たのだから、せめて外宮、内宮の両正宮の2つにはちゃんと御挨拶して帰らねばもったいない。
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