テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! 今年は、観測史上最大のエルニーニョ現象の影響か、暖冬傾向が顕著。12月11日も師走とは思えない“暖かい”嵐が東京を襲った。スキーを愛する石原さんは、本格シーズンを前にして、毎日空を見上げて「寒くなれ、寒くなれ」と念じている。
師走とは思えない“春風のように温かい嵐”
屋根を叩く雨音に気づいて窓の外に目をやる。打ちつけられた雨粒がしぶきとなって跳ね上がり、街全体が白く煙って見える。低い空を鉛色の雲が足早に駆け抜ける。雨は時に横殴りとなり、サッシのガラスでバラバラと砕け散った。
今朝の街は、とても冬の景色とは思えない。秋景色にもふさわしくない。季節を数カ月逆登り、夏の嵐の様相を呈している。
しばらくすると窓が露で曇りはじめる。ガラスを指でなぞっても、文字は書けない。結露しているのは、窓の外側だ。室内の空気に比べて、よほど暖かな風が吹いているに違いない。
サッシを開くと、生暖かな風が部屋に飛び込んできた。白いレースのカーテンを大きく膨らませて、それはまるで春風。冬の間に凍えて凝り固まってしまった体を解きほぐしてくれる春の風のようだった。
この十年来、花粉症を発症して春風から逃げ廻っていた僕も、今の季節ならば花粉の心配はいらない。大きく息を吸い込むと、暖かさと湿気が胸いっぱいに広がって心地良かった。
だが、喜んでばかりもいられない。2015年も、あと僅か三週間。大粒の雨と生暖かな風が荒れ狂った朝は、12月11日だったのだから。
天候は、あっけないほど簡単に回復した。空を駆ける黒い雲の固まりの間に、小さな青空が覗いたと思ったら、その面積はどんどん広がっていく。西の空から明るさが増し、ぽつんと取り残されたしんがりの雲が仲間を追って北へと上がっていった。
気象庁のホームページで、関東上空のレーダー画像の雨雲の様子を確認した僕は、ウェアに着替えて近くの公園にジョギングに出かける。風は強いが、気温は高い。もちろん花粉も飛んでいないのだから、駆け出さぬ手はない。
雨が上がったばかりの公園のジョギングコースには、人影はない。コースのアスファルトの上を濡れ落ち葉が一面に覆っていた。
観測史上最大のエルニーニョ現象の影響なのだろうか、暖冬傾向が如実に現れている今年は、紅葉も遅ければ落葉も遅い。ようやく色づいたイチョウやケヤキの葉が、この日の風で一挙に枝から引きちぎられたようだ。木枯らしならぬ、南風に吹き落とされるとは、葉っぱは思ってもみなかったに違いない。
ジョギングコースの陸橋から大通りを見降ろすと、街路樹のイチョウの葉っぱが車に踏まれ、黄色い雪の轍のようになっている。周回を重ねるうちに、ジョギングコースにも人の足で轍が出来る。日差しに照らされ乾いた葉っぱは、強風に煽られてカラカラと音を立てて舞い上がる。ふと見れば落ち葉に紛れてチョウチョが一匹飛んでいた。十二月の空の下にチョウが舞う。暖冬が生態系にも悪影響を及ぼしているのも間違いない。
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