テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! 「太陽にほえろ!」では“マイコン刑事”と呼ばれた石原さんは、実はコンピュータが大の苦手。スマホも使っていない石原さんが、滝沢カレンちゃんに教わって話題のインスタグラムに挑戦しますが…。
サイバーセキュリティ担当大臣の話題が、連日マスコミを賑わしている。でも、僕にとってこれは人ごととは片付けられない。
僕の学生時代には、パソコンなるものは存在しなかった。コンピュータといえば、大学の情報科学研究所に鎮座するもの。一台のスペースに、10畳間ほど必要と聞いていた。パンチカードを何枚も打ち抜いて、ようやく九九の掛け算ができるくらいの代物だった。

それでも、僕が配属された「太陽にほえろ!」の七曲署には、机の上に小型コンピュータが設置されていた。パソコンという呼称のない時代のこと、小型コンピュータを駆使して捜査に当たる僕は“マイコン刑事”と呼ばれた。
同期で社会人となった僕の友人達が、海外と連絡を取り合っていたのはテレックス。時差のため深夜に出社してテレックスを打電する。そんな商社マンの姿を、ちょっと羨(うらや)ましくも思った。
ところが、3つ歳下の弟が銀行員となった頃には、実家の彼の机の上にはコンピュータが置かれていた。
夜遅く帰宅した弟が、部屋で何をカタカタやっているのかと覗いてみると「ポートピア連続殺人事件」(*1)。あとはワープロ機能ぐらいのものならば、やっぱり家にコンピュータは必要ないと安心したものだ。
そんな僕の安心を外に、世の中にはジワジワとコンピュータのネットワークが広がっていった。企業では社員各々の席にコンピュータが置かれ、書類の作成も、連絡もコンピュータが中心となっていく。
総額40万円でアップルマークのパソコンを購入
コンピュータに手を伸ばすか、伸ばさぬか。迷っていた僕が一念発起したのは、1991-92の冬休みのこと。自由業の僕らは、会社が面倒をみてくれるワケではない。イノベーションは、自らが計画し、自ら実行しなくてはならない。正月休みにハワイへ行くか、コンピュータを買うか。そこで僕がお金と時間を投じると決めたのはコンピュータ。冬休みは、どこにも出かけず、じっとコンピュータと時を過ごすことを決意した。芝公園近くのダイエーにある大きな家電売り場で買ったアップルマークのパソコンは、プリンターを含め周辺機器すべてで総額40万円と記憶している。
僕にコンピュータのことなど、分かろうはずもない。マックを使う人は芸術系。ウィンドウズを使う人は実務系。そんな言葉に簡単に踊らされ、俳優の僕は当然マックに決めてしまった。
実際のところ、今も昔も僕はパソコンの能力の10分の1も使えていないのだろうから、マックにしようがウィンドウズにしようが、変わりなかったに違いない。