テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! コロナ禍以降、久しぶりに開催された1万人規模の市民マラソン大会に参加した良純さん。前日のゴルフを存分に楽しめないなどの憂き目にあいつつも、5シーズンぶりのフルマラソンをめでたく完走しました。
祝、完走。金沢マラソン。タイム、4時間59分39秒。
5シーズンぶりのフルマラソン。友人に誘われて、フラッと参加を承諾してしまった。自己ベストを狙うわけではなく、ラン友とおしゃべりをしながら秋の古都金沢の景色を楽しもうという軽い気持ちだった。

上岡龍太郎さん直伝の僕の調整法によれば、マラソン直近の2カ月間に月走200kmしておけば無理なく走破できるはず。なにしろ、コロナ禍のこの1年半は毎月200km、走り続けてきた。楽勝でマラソンできると思い誘いに乗ってしまった。前日はゴルフ。夜は何か美味しい物でも食べましょうなどという甘言にも惑わされてしまった。
ところが、大会の1週間前。友人から足が痛いから走れないという、まさかの申し出があった。レースに備え走り込んだら右足が壊れたのだとか。でも、ゴルフはできるから、金沢にはついてくるのだと。おいおい、マジかよ。
大会前日、彼はゴルフ倶楽部金沢リンクスのコースで小春日和にも恵まれてバカ当たり。僕はといえばマラソンに差し支えないように、足をかばってひたすらにカートに乗っているから、ゴルフのリズムが出やしない。楽しそうに談笑しながら歩く仲間から一人離れてカートに籠もっていた。
マラソンと前日のゴルフは両立しない!?
マラソン前日のゴルフには苦い思い出がある。2012年の神戸マラソン前日のこと。調子に乗って六甲山のゴルフコースを回り、イタリア料理を食べて走ったレースがどれだけつらかったことか。ゴールのポートアイランドを目指して橋を渡る頃には、足が上がらず初めて歩きそうになった。
マラソンランナーの人の流れは、走るタイムによって見え方が変わってくる。3時間ランナーは、サーッと目の前を駆け抜ける。4時間ランナーはタッタと一歩一歩、足を踏みしめて前へ進んでいく。5時間ランナーは、ズルだのザリだの足の裏を引きずりながらゆっくり通り過ぎる。6時間ランナーともなれば、ランナーとは名ばかり、足を引きずり歩く落ち武者の群れだ。
タイムが遅ければつらい時間が長くなる。つらい時間が長ければタイムは遅くなる。負の連鎖に陥って、神戸の埠頭を彷徨(さまよ)った。
そう、マラソンと前日のゴルフは両立しないことを、僕はちゃんと学んでいたはずなのに…。せめて赤ワインだけはやめておこうと、ゴルフ場から一人別れて部屋に戻った。ホテルのルームサービスでスパゲティーをとって、足りない炭水化物は近くのコンビニで団子を買って補充した。
緊急事態宣言が明け、ようやく賑わいを取り戻した金沢の夜の街へ消えて行った友人を尻目に、僕は早々と就寝した。何しろ、マラソンは命懸けの遊びなのだ。