感染対策に配慮して開催された市民マラソン大会
大会当日は、曇時々晴れ。最高気温は19℃と絶好のマラソン日和。アスリートランナーにとっては少し気温が高いが、市民ランナーにとっては有難い温度。足が止まった時に体が冷えるのが、市民ランナーには一番つらいことなのだ。
2020-21年シーズンは、コロナ禍で市民マラソンは全国的に中止。2021-22年の今シーズンも大会中止や延期が相次ぐ中、全国に先駆けて金沢マラソンは1万人規模の大会として催された。この大会が無事に運営されれば、全国的に大会が戻ってくるという市民マラソン大会の試金石だ。
ランナーはスタートまではマスク着用。走っている時は、マスクをはずしてかまわない。レース中に途中のトイレを使用する時は、入り口でマスクが配布され、トイレ使用前、使用後に手をアルコール消毒される。ゴールしたらアルコール消毒とマスクがすぐさま配られる。コース沿道の観客は、ハイタッチや大きな声を出しての応援は控える。ランナーも観客もコロナにできる限り配慮する大会をと努力した。
エリートランナーを先頭に、タイムの早い人から5000人がまずスタート。10分の間隔を空けて残りの5000人がスタートする。スタート地点でもコース上でも、なるべくランナー同士の距離が取れるように、スタートも工夫されている。
僕は後半の部、8時45分スタート。それも約1万人のランナーの最後尾からスタートすることになった。金沢マラソンは制限時間が7時間5分とやさしいから、まず関門にひっかかる恐れはない。最後尾からスピードを上げてランナーを抜けば抜くほど僕の順位もタイムも上がるというわけだ。
スタートから金沢城を大きくグルリと一周すると、金沢一の繁華街、香林坊に出る。道のド真ん中を自分の足で踏みしめて、普段は見られない角度から街を眺めるというのが都市マラソンの醍醐味の一つだ。
スタートから10kmで、コースの最高地点を通過する。60m上ったとはいえ、広い道をゆっくりと上るので苦にならない。下りは高度のアドバンテージをゆっくり使っていくから、スピードが出る割に膝にも負担がかからない。
車道を大胆に規制した広いコース。起伏が少なく、特に後半は真っ平。何よりお城の周り、繁華街、駅前と存分に金沢の街の景色を楽しませてくれる。僕が今までに走ってきたマラソンの中で、ベスト1、2に挙げられるコースだ。
今回は自己ベストを狙うような、ガッツリと走る心構えではなかったから、あっちキョロキョロ、こっちキョロキョロ。5年ぶりのフルマラソンに家族も心配していたから、レース中に写真を撮ってはLINEで現状を報告していた。
でも、ただでさえキーを打つのが遅い僕は、走りながらの作業に四苦八苦。そこで気が付いた。ビデオを自撮りしてそのまま送ればいいではないか。
僕は要所要所でスマホを持った右手を掲げ、一人でレースを実況中継した。ここでも、滝沢カレンちゃんに教わった片手自撮りの技が生きたワケだ。

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