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石原良純の「日々是好転!ときどきカラダ予報」

食欲の秋もダメ、スポーツの秋もダメ…ならば芸術の秋

第63回 芸術は遠きにありて思うもの

 石原良純

二人展は千客万来で、大成功のうちに終了

 前田君は、慶應高校卒業後、慶應大学には進学せず東京芸術大学の美術学部彫刻科に進んだ、いわば生粋の芸術家。片や伊藤君は慶應大学から電通に入社。現役の広告マンでありながら絵を描き続けてきた、いわば素人画家。

 そんな二人を結びつけたのが田中君。二次会の酒席で芸術談義で盛り上がり、クラスメートで個展を開いたらおもしろそうだからやってしまおうと、まるで高校生の文化祭の乗り。トントン拍子で話が進み、個展が実現してしまったというのだからすごい話だ。

伊藤一さんと並ぶ石原良純さん。後ろに写る絵画のモチーフはブラジルのリオデジャネイロ。

 伊藤君は今回の個展開催にあたり、奥の壁面を飾る連作の風景画を描き上げた。そのモチーフになっているのは、ブラジル・リオデジャネイロ。

 彼のリオデジャネイロは、コルコバードの丘のキリスト像でもなければ、コパカバーナの白い砂浜でもない。ファヴェーラと呼ばれる低層住宅が建ち並ぶスラム街。貧民街に暮らす人々が必要に応じ思うがままに違法建築を繰り返し生まれた街。そんな街の景色には、確かに人を惹きつける不思議な魅力がある。とはいえ、よそ者が近づけばたちどころに身ぐるみ剥(は)がれ、命さえも奪われかねない。とっとと景色をカメラのファインダーに収めて逃げて帰って来たという。

 でも彼は、お遊びでリオへ出かけたワケではない。リオデジャネイロ・オリンピックは、電通のスポーツ局にとって一大イベント。4年後の東京オリンピックも見据えて局長みずから現地に飛んだのだ。つまりスポーツ局長としての体験が、すぐに絵画のキャリアに活かされたというわけだ。

 それにしても、東京オリンピックを見据えた忙しい最中に、この個展に臨んだというのだから驚きだ。仕事のできる男は違うねぇ。

前田哲明さんと並ぶ石原良純さん。手前の、鉄の筒が寄り添うように林立する彫刻が前田さんの作品。

 前田君は芸大卒業後、創作活動一筋。主に鉄を使ったスケールの大きな作品を創作する。鉄の筒が寄り添うように林立する作品は、観る者を重厚感で圧倒する。しかし同時に、内部の空洞が安心感を演出してくれる。個展はもちろん、5年間のイギリス留学など国内外で活躍し続けている。

 今回は室内の限られたスペースに大きな作品は登場させることはできないが、小ぶりながら彼ならではのエッセンスの効いた彫刻作品が出品された。それと共に、彫刻作品と対に創作することで、相乗効果があるというドローイング(線画)が会場を彩った。

 プロデューサーの田中君いわく、お客さんは彫刻にはなかなか手が出ない。作品をお客様に買ってもらうために、前田君に数多くドローイングを出品するように促したという。実際、会場の作品のネームプレートには売約成立を示す赤ピンが数多く打たれていた。素人プロデューサーとは思えない田中君のお手柄だ。

 もはや、三人ともに素人の域は超えている。千客万来で三人三様にホクホク顔。二人展は大成功のうちに終わった。

 ウ~ム、僕も仲間に入れてもらいたいものだ。でも、腫れが引いたら創作活動に勤しむ前に飲んだくれるに違いない。結局、芸術は遠きにありて思うものですな。

石原良純(いしはら よしずみ)
俳優・気象予報士
石原良純さん 1962年1月15日生まれ。神奈川県逗子市出身。慶応義塾大学経済学部卒。テレビ、舞台、映画など幅広く活躍。趣味はマラソン。自宅から10キロ先の所属事務所まで走って通うことも。

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