日経グッデイ

石原良純の「日々是好転!ときどきカラダ予報」

ジョギング、ダム、温泉、そして鉄道――やっぱり秋は旅の季節

第24回…天竜川の旅で頭も体もリフレッシュ!

 石原良純

テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! 講演のため9月末に訪れた長野県・天龍村で、ジョギング、ダム、温泉を楽しんだ石原さん。無事講演を終えた石原さんに、もう一つ大きな収穫がありました。全国を股にかける石原さんが「驚嘆に値する」と絶賛したものとは?

 川の湾曲部の山肌の僅かな平地に肩を寄せ合うように家が並ぶ天龍村の中心部を離れ、県道の坂を一気に駆け上がる。杉小立が途切れた向こうに、『平岡ダム』の勇姿が現れた。

 9月の日本列島には、次々と南の海から台風がやって来た。秋雨前線の雲も、連日のように、大地に雨を降り注いだ。雨水を貯え切れなくなった山々が、沢という沢に水を吐き出した。そんな水の流れが集まった天竜川は、その昔の“暴れ天竜”の異名を取り戻す。水量に耐え切れないダムは、怒涛のごとく茶色く濁った水を放出していた。

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今年の9月は雨が多く降りました。9月末に訪れた天竜川は茶色く濁った水で、水かさを増していました。写真右は、天竜川水系のダムの中で一番大きい『平岡ダム』を背景にした石原さん

 天竜川水系は、日本の水力発電の宝庫。そして、長野県の最南端に位置する『平岡ダム』は、戦前に計画された天竜川水系のダムの中で一番大きく、高さ62.5メートルを誇る。

 発電に使われる水は、ダム湖から地下トンネルを通って発電施設に送られタービンを廻す。普段は堰堤から貴重な水を放水することはない。連日の雨のおかげで僕は絶景に出会えた。

ジョギングシューズとウェアーがようやく役に立った

 僕は地方へ出かける時、少し時間がとれそうならばジョギングシューズとウェアーを持参する。でも、この9月は雨降り続きで、運び損で終わることばかりだった。ようやく天龍村で、日頃の努力が実を結んだというわけだ。

 9月25日の日曜日は、天龍村誕生60周年記念式典の記念講演の講師として招かれた。新幹線で豊橋へ。そこから乗り継ぐ特急は、日に2本しかない。到着後、講演まで時間が空くと知った僕は、早速、インターネットで現地調査に乗り出した。

 まず、講演会場の見取り図を聞いて、風呂やシャワーがあるかをチェックする。なければ近隣の施設を探す。銭湯やスポーツクラブ、日帰り入浴可能な温泉があればベストだ。

 天龍村の観光マップを検索すると、村営の『天龍温泉・おきよめの湯』を発見した。講演会場から、川を渡って山を登って約15キロといったところか。キロ6分ペースで、1時間半。それから風呂に入って戻ってくる。時間的にはギリギリ間に合っても、そこまで魂つめて走ったら、講演会どころではなくなってしまう。僕は、天龍村に遊びに来ているワケではないのだから。

 ガックリと肩を落としたことろで、僕は発見。村のホームページによると、温泉の分院がちゃんと村の中心にあるではないか。それも講演会場の目と鼻の先の駅舎の中。

 JR平岡駅は、村営施設と合体しレストランや特産品の売店、宿泊施設を兼ね備えた『龍泉閣』という商業施設となっている。その最上階の4階に、村を一望できる龍泉の湯があった。

 『平岡ダム』の水音を聞きながら眺める景色は、秋の訪れがまだ遠くに感じられる。それでも青空に流れる雲だけは、少し秋めいてきたかもしれない。満足いくだけ汗をかいたところで講演会場に戻る。そして、スーツを持って温泉へ。

 『龍泉閣』の明るい浴室に先客はひとりだけ。ゆっくり湯舟につかって体を伸ばし、足の疲れを癒す。アルカリ性単純泉の少しぬるりとした湯が心地よい。山沿いの村の休日をしっかり楽しんでから、楽しく講演会に臨むことができた。

驚嘆に価するJR飯田線の風景

 この日の僕は超ラッキー。大好物のダム、温泉の他にもう一つ、大収穫があった。それはJR飯田線。

 飯田線は、愛知県の豊橋と長野県の辰野を結ぶ路線。愛知、静岡、長野が誇る険しい山岳地帯を貫通している。天竜川の激しい渓谷を走る列車から眺める景色は、数々の鉄道を乗りこなしてきたと自負する僕の目からも驚嘆に価する。

 もともとは4社の地方鉄道が統合されて成立した路線は、簡易な規格で建設されたこともあり、急カーブや急勾配の路線が続く。右岸から左岸へ、左岸から右岸へと川を縫う。時には、数キロにも及ぶ長いトンネルが山をぶち抜いて、天竜川の本流から支流へ、支流から本流へとたどる川筋さえもスイッチする。

 だから、列車の足元を流れる渓流は、時には右手、時には左手に現れる。列車進行方向のどちら側の席に座っていても、旅客は天竜川の絶景を楽しめる。

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ワイドビュー伊那路から眺めるJR飯田線(写真左)。写真右は、ワイドビュー伊那路の先頭車両を背景に“自撮り”した石原さん

 豊橋、飯田間を1日2往復する特急“ワイドビュー伊那路”もなかなかいい。3両編成の短い列車だが、大型テーブル付きのセミコンパートメント席は、行楽客ならばビールとおつまみを並べて車窓を眺めるにはもってこい。ただし車内販売はないから豊橋駅でビールと名物のかまぼこを買うことを忘れてはならない。

 そして、飯田線といえば秘境駅。トンネルとトンネルの短い間の急峻な山肌にしがみつくローカル駅のこと。辺りに人家はおろか道すら見当たらないこんな所にある駅を誰が何の目的で利用するのかと首を傾げてしまう。

 秘境駅ファン垂涎の的が飯田線。飯田線にある6つの秘境駅を一回の乗車で巡る“飯田線秘境駅号”が、春と秋の観光シーズンには運転されているのだそうだ。

 ジョギング、ダム、温泉、そして鉄道。大満足の天龍村行。やっぱり秋は旅の季節。旅することで、頭も体もリフレッシュ。この秋はワイドビュー伊那路で天竜川を遡ることをお勧めする。

石原良純(いしはら よしずみ)
俳優・気象予報士
石原良純(いしはら よしずみ) 1962年1月15日生まれ。神奈川県逗子市出身。慶応義塾大学経済学部卒。テレビ、舞台、映画など幅広く活躍。趣味はマラソン。自宅から10キロ先の所属事務所まで走って通うことも。