トロンボーンの組み立て方、持ち方から猛稽古
僕の記憶の中でトロンボーンを演奏していた知り合いは谷啓さんしかいない。吹くことはおろか、どう持てばいいのかも分からない。
トロンボーンにもトランペットと同様にマウスピースが必要ということさえも初見聞。恐る恐るマウスピースに口を付けて息を送り込んでみると、ボーッと音が鳴ったではないか。金管楽器は素人には音が出せないというのが僕の認識。それが、いきなり音が出たということは、僕とトロンボーンの相性はいいのかも。僕が担当する楽器は、僕のそんな思い込みであっけなく決まった。
ド素人の僕の面倒を見てくれるのは、注目のトロンボーン奏者の若田典子さん。トロンボーンの組み立て方、持ち方から練習は始まった。
トロンボーンは二つの大きなパーツに分けられる。ベル管とスライド管をつないでマウスピースを付けたら音が出る。油断しているとスライド管がスルスルと滑ってベル管から抜け落ちてしまうから、気を付けないといけない。楽器メーカーからお借りした大切な楽器を不用意に落としてゆがめないこと。トロンボーンを壊さずにお返しするのも、僕の責務の一つだ。
トロンボーンは、スライド管を前後に動かすことと、マウスピースに息を吹き込む唇の形を変えることで、それぞれの音を生み出す。
スライドは、手前から順に第1ポジション~第7ポジションの7ポジション。唇の形は今回の曲では3段階に変化させなければならない。

先生の後に続いて、スライドを動かしながら一つひとつの音を試していく。そこから、唇の形を変えて一つ高い次の音を出すのが難儀。高い音ほど、唇の息の通り道が細くなっていくのだが、マウスピースの横や鼻から息が漏れて音が出やしない。
笑って、笑って。スマイルするように唇を横に長く使えと言われても、行き場を失った息が口の中に逆流してせき込んでしまう。
それでも1回目のレッスンで、今回の曲で使う音は、ひと通り出すことができた。先生は、音が出たということは、全体の6割方、レッスンは済んだようなものだと笑っている。
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- 気分は『新春かくし芸大会』の堺正章さん