テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! 今年の夏は、例年になく台風が沢山やって来ました。そんな中でも石原さんは、次のシーズンを見据えて駒沢公園でジョギングに勤しみ、夜は黒糖焼酎を楽しみました。そんな平和な夏を過ごした石原さんが、夏の最後に「最重要課題」をやり残したことに気付きました。それはいったい?
「夏が終わる」と初めて感じたお盆明けの逗子海岸
「あっ、夏が終わる」
子供の僕が夏の終わりを感じたのは、お盆明けの逗子海岸だったかもしれない。
お盆の頃になると「海へ出かけてはいけません」と、おばあちゃんが口を尖んがらかせて止める。子供の僕らにしてみれば、なんで日時を区切って、突然、海へ行ってはいけないのか、さっぱり訳がわからなかった。それでも、泳いでいたら海の底から何かの霊に足を引っぱられる。そんな漠然とした恐怖におののいて、祖母の言いつけを忠実に守っていた。
もちろん、海水温が上昇してクラゲが増殖することも、はるか南の海上で台風が発生し土用波が海岸にやって来ることも、自然豊かな逗子の子供は知っていた。
いざ、お盆が明けて駆け出した砂浜は、以前とどこか様子が違う。波の音が少し大きい。岬の輪郭が少しはっきり見える。海風が少し乾いている。ギラつく太陽も少しよそよそしく思える。海の家のおばさんも少し元気がない。
これだけの事実をまのあたりにすれば、子供の僕にだって夏が終わろうとしていることが理解できた。夏が終わる。夏休みが終わる。夏休みの宿題は終わっていない。子供なりの三段論法で僕らは海から家へ駆け戻っていた。
「春が来た」「夏だ夏」「もう、秋だ」「冬が始まる」。日本人は春夏秋冬、四季の訪れを口にする。空を眺め、風に吹かれ、草花を愛で、旬を食す。自然豊かな日本では様々な形で誰もが移り行く季節に気がつく。
季節の到来を僕たちは言葉にするが、去り行く季節へ未練を抱くのは夏だけだ。「夏が終わる」とは言うが、「春が終わる」「秋が終わる」「冬が終わる」とは誰も言わない。
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