温泉旅館を堪能した2日目はゆっくり出発。函館の駅前朝市は朝でなくてもやっているのだから。ここで名ツアーコンダクターが電車好きの長男・良将へプレゼント。次の目的地、松前へ向かう途中まで、北海道のローカル線の旅を楽しんでもらおうという趣向だ。函館駅からディーゼル列車の旅をする良将を、僕は車で先周りして収容しようという算段だ。
自分は全く興味のない列車の旅に、妹・舞子が手を挙げた。頼りないお兄ちゃんを放っておけない二人は、寅さんとサクラといったところだろうか。
しかし、それよりも驚いたのは、待ち合わせの渡島当別駅でのこと。僕が列車より先に着いた駅前の小さなロータリーに車を駐めていると、大きな観光バスが入って来た。聞けば観光ツアーの一団も、僕の思惑と同じく旅のひととき、ローカル線の旅を楽しむのだとか。やっぱり、名コーディネーターの旅のコース設定に間違いはない。
駅で二人と無事合流したなら、まずは『トラピスト修道院』へ。続いて『北島三郎氏生家前』を通り越して、『横綱千代の山・千代の富士記念館』と『福島町青函トンネル記念館』を見学する。心残りは渡島当別駅近くの『川田男爵資料館』が休館していたこと。川田男爵とは、あの男爵いもを創った人なのだとか。こうしてひとつひとつ、記念館や資料館をしらみつぶしに巡ってこそ、立派な夏の観光旅行というものだ。
松前城はガッカリ? 違う違う!立派なお城です
松前の市街に入った頃には陽も傾き、今回の旅のメーンイベントともいえる『松前城』見学は翌日とすることにした。
北海道の人にとって『松前城』は“北海道三大ガッカリ遺構”に数えられるのだとか。街の皆さんに「何でこんな所に来たの」「何も残っていないからねえ」「恥ずかしいわぁ」と声を揃えて平身低頭された。
違う違う。立派なお城ではありませんか。城下町だって北辺のお城を盛り上げようと一生懸命に整備されている。地元の皆さんに、もっともっと“おらが城”に誇りを持ってもらいたい。
今回の旅で、一番の感動は、松前から江差までの国道228号線、通称『追分ソーランライン』のドライブだった。光は燦々と、空気はカラッと。海はどこまでも青く。真っ青な空に浮かぶ白い雲。その景色は、日本の夏景色とは思えない。まるで、いつかドライブしたハワイ島のハイウェーのようであった。
一生懸命に遊べば、思いもよらない景色に出会える。これぞ僕の旅の流儀だ。
でも、一緒に旅する家族は、疲れるみたいよ。
俳優・気象予報士

