日経グッデイ

石原良純の「日々是好転!ときどきカラダ予報」

43年ぶりに城下町を自転車で疾走!

第36回…石原さんがこだわる「萩観光の絶対案件」とは

 石原良純

テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! お子さんの受験を控えた石原さんは、“松陰先生の御利益”も期待して、山口・萩の旅に出かけました。実は萩は、43年前に石原家の家族旅行で訪れた思い出の地。43年ぶりの萩はどうだったのでしょうか。

山口・萩は、石原家にとって思い出の地

 “おいでませ、山口へ”。

 そんな言葉に誘われて、この夏の家族旅行は山口に決定した。

 僕が初めて城下町、萩を訪れたのは、中学生を目前にした春休みのこと。祖母と母と弟2人。もちろん、親父は女・子供と一緒に旅行などできるかと。すっかり大人びた高校生の兄も、この旅行には参加しなかった。その後、中学生の僕は部活で忙しくなったから、この山口行が最後の石原家の家族旅行ということになる。

 長州藩の城下町、萩は、明治維新の立役者を大勢輩出した。彼等の足跡が、街のいたる所に残っている。ちょっと街を巡れば、まずは世界遺産にも名を連ねる『松下村塾』。吉田松陰が暮らし、門下生を育んだ場所だ。伊藤博文の旧宅もあれば、木戸孝允の旧宅もある。その二筋向こうは、高杉晋作の誕生の地だったりもする。

 そんな歴史豊かな街ならば、一昨年の大河ドラマ『花燃ゆ』を観ていたウチの子供らも興味を抱くに違いない。それに来年は、下の子が中学受験。再来年は、上の子が高校受験を控えている。『松下村塾』を観覧し、松陰神社をお参りしたなら少しは御利益があるかもしれない。

萩の町は平らなので自転車で巡るのに最適。43年前も自転車で観光した
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 萩観光となれば、自転車と相場は決まっている。43年前の小学生の僕も、白壁が往時の佇まいを色濃く残す城下町を疾走した。小旗を持ったガイドさんに引き連れられて観光地を巡るのではなく、思い思いに貸自転車で廻るのは、当時としては画期的なことだった。兄弟3人で先を争い、“危ない”と母親に怒鳴られながら、区画整理が整った武家屋敷の真っすぐな道を走った。

 聞けば、日本海に注ぐ阿武川の三角州に造られた萩の城下は、概ね平らで自転車で移動するにはもってこいの土地なのだそうだ。だから貸自転車観光が、全国に先駆けて始まったのだという。

 自転車でまず向かうのは、海に突き出た指月山を背負ったお城と、これも萩では相場が決まっている。『萩城』は、日本海と阿武川に四方を囲まれた天然の要塞。籠城の際には、指月山が最後の砦となる平山城(*)だ。

* 平野の中にある山などに築城された城のこと

 内堀を渡り、本丸へと颯爽とペダルをこいで、城内へ滑り込んだ覚えがある。そんな僕の思い出も、間違ってはいなかった。本丸門跡の入口には、“自転車の乗り入れ自由”と看板がちゃんと立っていた。

天守台跡で自撮りでパチリ。萩城は自転車の乗り入れ自由だ
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 城フリークである僕は、日本の名城を数十カ所は巡って来たが、城内を自転車で見て廻れる城は、『萩城』以外に記憶がない。お堀端の草の小径を駆けると桜の枝が頭を突っ付き、地面に浮かび上がった木の枝がタイヤを弾く。しっかりハンドルを握っていないと、危うくお堀の中へ転落しかねない。なんとも大らかに、城内観光を楽しめる。

 往時には、高さ14.5m、五層の威容を誇った天守閣は、明治7年の廃藩置県と同時に諸公の範となるべく、いち早く取り壊されてしまった。それでも天守台跡に立てば、砂州に広がる武家屋敷の町並みを遠くまで眺めることができる。

 落ち着いた町並みをぼんやり眺めていると、松蔭をはじめ、高杉や木戸といった志士達の熱き息づかいが聞こえてくる気がする。心地よい海風に当たりながら天守台から街を眺めることこそ、萩観光の絶対案件だ。

 歴史が苦手という人は、『萩博物館』に立ち寄って、まず毛利家や維新の志士の足跡をたどってみるのもいい。僕が訪れたこの夏、博物館では『驚異の遭遇!未確認生物』という特別展が催されていた。カッパのミイラやツチノコの標本が並ぶ。ひととき、すっかり歴史を忘れて特別展示を楽しんだ。

 僕の萩観光のお勧めは、川を渡って城下からちょっと離れたJR萩駅。山陰本線の主要駅だが、列車は2時間に1本という時間帯もある。しかし、そんなダイヤとは不釣合いなほど駅舎は立派に整備されている。空色にペイントされた駅舎は、駅が開業した明治初頭の趣を今も残す。

43年前にも泊まった宿は、武家屋敷そのままの佇まい。石垣や白壁は昔どおりだった
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 そして、無人駅の内部には日本の鉄道の父と呼ばれる『井上勝の記念室』がある。井上勝は、イギリスに密航し西洋技術を学んだ、あの“長州ファイブ”の一人。明治新政府においては日本の鉄道開業に尽力し、さらに日本人だけでの鉄道建設を目指した。駅舎ひとつにも、そんな明治の英傑がいるのも、萩の奥深さだ。

43年前にも泊まった思い出の宿を再訪

 萩での宿は、『萩城三の丸 北門屋敷』。上級武士が屋敷を構えた一画にある、まるで武家屋敷そのままの佇まいの旅館。実は、43年前に宿泊した思い出の宿でもある。当時は旅館が開業したばかりだったそうだが、立派な石垣や綺麗な白壁は昔どおり。ひとつ違っていたのは、温泉が完備されていたこと。おかげでサイクリングでかいた汗を、さっぱり洗い流すことができた。

うれしいことに温泉が完備されていた。サイクリング後の温泉は快適そのもの
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 それにしても、萩が近くなったのには驚いた。滅法、道路事情が良い。歴代総理を8人も輩出したお土地柄ということか。日本海側の萩から、瀬戸内側の宇部山口空港まで1時間ちょっと。萩と東京は飛行機を使えば3時間もあれば行き来できる。

 空港に早く着いて時間が余った。空港のレストランで、僕は山口の銘酒を楽しむ。その横で子供らは夏休みの宿題帳を開いている。こりゃ、少しは松蔭先生の御利益があったということか。

 おいでませ山口へ。

石原良純(いしはら よしずみ)
俳優・気象予報士
石原良純(いしはら よしずみ) 1962年1月15日生まれ。神奈川県逗子市出身。慶応義塾大学経済学部卒。テレビ、舞台、映画など幅広く活躍。趣味はマラソン。自宅から10キロ先の所属事務所まで走って通うことも。