太陽族も若大将も、夏の夕暮れ時はウクレレと相場が決まっていた。そこにアロハシャツでももちろんいいが、あえて僕は日本の夏には着物をトッピング。グイッと角帯をしめれば、キリッと身が引き締まり汗も止まるというものだ。角帯の結び方を、夏の初めにテレビ局の衣装部屋でレクチャーしてもらうのが、夏の恒例行事の一つとなっている。
ウクレレを爪引けば、気分はすっかり若大将。
もちろん、夕暮れのハッピー・アワーにお酒は欠かせない。冷えたビールといきたいが、尿酸値が気になる僕はビールはやめて蒸留酒。となれば夏の酒はラム。サトウキビから造った蒸留酒。カリブ海でも、日本でも夏はラム。
NHKのEテレ、趣味講座番組でウクレレの名手に直伝された僕のウクレレの腕前は、何年経っても一向に上達していない。おはこも『嫁においで』から一つも増えやしない。
それでも曲集を開いては、チャラン、チャラと弦を爪引けば、気分はすっかり若大将。当然、ラムのグラスもスイスイ進む。気がつけばラムのボトルは空となり、翌朝、僕は急性胃炎を発症した。アルコール度数43度のラムを、オンザロックでグイグイやるのは体に負担が大きすぎる。
身をもって学んだ今の僕は、芋焼酎。大方の焼酎は25度。僕の愛飲の宮崎産「黒霧島」ならば20度のものもある。ロックグラスに氷を満たし、ドクドク注いでも胃が痛くなる心配はない。
ビニールプールを屋根裏から引っ張り出した
そしてこの夏、僕は新たな真夏の楽しみ方を発見した。僕の2015年の夏は、芥川賞の夏。
芸人の又吉直樹さんが、芥川賞を受賞したことが大きな話題となった。一緒にテレビに出ることもある彼がどんな世界を描いたのか。どんな文章を書くのか。ちょっと手を出しにくい純文学の世界でも、ここは一つ自分の目で確かめずにはいられない。僕も早速、書店に出かけ受賞作『火花』を手にした。
フムフム、こんな作品か。でも、僕には書評を記す自信がない。本屋大賞、ミステリー大賞、直木賞作品には手が出ても、とんと純文学とはこれまで縁がなかったから。