テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! 一番好きな果物は、さくらんぼという良純さん。ふるさと納税でさくらんぼをゲットして、心ゆくまで楽しめるようになって7シーズン目、予想外の出来事に見舞われてしまったのです。“良純フルーツ帝国”はどうなってしまうのか。
僕が一番好きな果物は、さくらんぼです。さくらんぼはフルーツではありません。果物です。日本産の果物は、ブドウもモモもリンゴも世界で一番美味しい。そんな果物の中でも、ナンバーワンはさくらんぼです。
さくらんぼの季節は短い。6月中旬、山形産ハウス栽培ものに始まって、7月中旬の北海道余市産の紅秀峰まで。およそ1カ月半といったところか。1年ぶりにやっと会えたという賞味期間の短さもさくらんぼの魅力の一つに違いない。

以前、大河ドラマ『天地人』に出演した時、舞台となった米沢・上杉藩の縁でJA山形さんから、大量のさくらんぼが収録現場に差し入れられた。スタジオの休憩所の片隅に山と積まれたさくらんぼ。“御自由にお食べ下さい”と貼り紙があっても誰も手を伸ばさない。僕はさくらんぼに遠慮はしない。ガバッと手のひらいっぱいにさくらんぼをつかみ取った。撮影が再開されたのだろうか、気がつけば休憩所で僕はたったひとりでさくらんぼを食べ続けていた。
さくらんぼの蔕(へた)を親指と人差し指でつまみ上げると、プルンプルンと真っ赤な果実が左右に小さく揺れる。よく見ると果実は真ん丸ではない。僅かながらリンゴのように表面に歪みがある。
口元に運んださくらんぼに、まず前歯で歯をたてる。さくらんぼの皮はわずかに硬いが、少し弾むと破れてくれる。皮が傷ついた果実を舌で転がし奥歯に装填する。つぎに前歯の隙間から飛び出した蔕をプチッと引っこ抜き、奥歯で果実を圧し潰す。すると柔らかな果肉から甘くてほんのり酸っぱい果汁が口の中に広がってゆく。
さくらんぼを美味しく食べるコツは、口の中の幸せを絶やさないこと。だから奥歯がさくらんぼの種に到達する前に、次のさくらんぼに手を伸ばす。舌で果肉を種からはがし、種を吐き出すと同時に次のさくらんぼを口に入れる。
家族は休むことなく黙々と食べ続ける僕を“さくらんぼ食い機”と揶揄(やゆ)するが、年に1カ月だけ味わえるこの世の幸せは満喫した者勝ちだ。
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