画面には自コースの水面から結果を伝える電光掲示板を見上げ、会心の笑みを浮かべる大橋悠依選手が映っていた。女子400m個人メドレーで激戦を制し、日本選手が今大会2つ目の金メダルを獲得したレースだった。
プールサイドを歩く大橋選手の表情は、泣いているようでもあり笑っているようでもある。偉業を成し遂げた安堵と満足感、喜びが交じり合う。これぞ言葉なくして観客を魅了するスポーツ中継の醍醐味だ。
続いて始まった卓球、混合ダブルスからも目が離せない。準々決勝では優勝候補と目される水谷隼・伊藤美誠ペアがドイツペア相手に大苦戦。ゲームカウント3対3で迎えた最終第7ゲームでは、6-10と相手にマッチポイントを取られて追い詰められた。思わず家族で立ち上がり、「ニッポン!チャチャチャ」と手拍子を交えて日本コールをしてしまった。
馴染みのないスポーツを知る絶好の機会
水泳や卓球といった普段から馴染みの種目にとらわれないのが自国開催の五輪の妙。テレビのチャンネルをザッピングすれば、どこかに見慣れぬ“おもしろスポーツ”が潜んでいる。
新種目の3×3バスケットボールは、5人制バスケットボールの約半分のコートで3人対3人で一つのリングにボールを入れることを競う競技。4人の選手が次々にローテーションして10分間という短い時間で決着がつく。試合中、監督やコーチはゲームにタッチできない。4人の仲間の知恵だけでゲームは足早に進むところがストリート系っぽい。
ハンドボールや水球の中継を目にするのも五輪ならではのことだ。何人対何人の勝負なのか、何分間の戦いなのかも分からない。ただただ、その競技の激しさに圧倒される。至近距離からの相手選手のシュートを顔面で止めるキーパー。ハンドボールにしろ水球にしろ、絶対にキーパーだけはやりたくない。
ホッケーは、僕にとっては懐かしい競技だ。中学1年生で入部したサッカー部は、グラウンドを半面ずつホッケー部と共有していた。ところが2年生になるとホッケー部はなくなってしまった。日本ではマイナー競技もインド、パキスタンなど旧大英帝国領を中心に世界的には多くの愛好家がいるスポーツだ。大きなフィールドを駆け回り、スティックを使い球を自由自在に操る。そのスピード感たるや、僕の想像を超えていた。
男子日本代表チーム「サムライジャパン」のメンバーは、53年ぶりに出場する五輪の初戦、世界ランキング1位のオーストラリア戦を前に抱負を述べる。
「勝負にこだわることはもちろん、多くの人にホッケーを知ってもらいたい」
マイナーと目される競技にとっては、五輪こそ競技イメージを一変させられる、4年に一度の絶好かつ唯一のチャンスに違いない。
以前、北京五輪で日本人で初めてフェンシングのメダリストになった太田雄貴選手は、メダルを取ることでフェンシングを日本に広めるために北京五輪に懸けていたと語っていた。
また、アーチェリーは2004年のアテネ五輪で山本博選手が銀メダルを獲得したことで注目を集めた。その後、多くの養成資金や人材が集まるようになったと聞く。
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