テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。前向きに生きれば、日々是好転! 買い物がからきし苦手な石原さん。ことの発端は、「ふるさと納税」で見かけた、お礼の鉄道模型…。ストレス解消法に「買い物」が最も理解できない行為だと思っていたが…。
「僕の買い物は、いつもヒット・アンド・アウェー」
健康に暮らす秘訣は、ストレスを溜めないこと。
フムフム。では、ストレス解消法は。
運動する。食べる、飲む。趣味の世界に浸る。などなど、人それぞれ自分なりの解消法がある。そんななかで、僕にはとんと理解できないのが、ストレス解消に買い物に走るという人。
僕は買い物が、からきし苦手だ。デパートや百貨店へ、自分に必要な物を探しに行っても、二、三ウィンドーを覗いただけで、物酔い、人酔いしてしまう。だから、僕の買い物は、いつもヒット・アンド・アウェー。あらかじめ目的の品を決め、他の店には目もくれず、目的のお店めがけて一直線。もちろん、店で色や形をぐだぐだと悩まない。当初の予定通り、さっと買ってさっと引き上げる。
きっとこれは、幼少期のトラウマに違いない。子供の頃、二、三カ月に一度、母親に連れて行ってもらった横浜駅の高島屋は憧れの場所だった。小さな旗が立ったお子様ランチや、屋上の最中の金魚すくい、そして何より、母と二人きりで出かけるその日ばかりは、他の兄弟から母親を独占できるのだから。それでも、母親が洋服や靴やあれこれ選ぶデパートの大半の時間は苦痛だった。初めのうちこそ、品物選びに参加する素振りはするが、すぐに飽きてしまう。皮靴を履いて帽子を被ったお出かけ姿の僕は、近くの椅子に足をブラブラさせて座っていた。
母の付き合いですっかり買い物が苦手に
今にして思えば、母親も自分の物ばかり探していたワケではなかろう。また、お伴するのが女の子だったら、一緒に洋服選びの楽しみもあったろう。それが我が家は男ばかりの兄弟四人。どの子を連れて行っても、飽きる子供をあやしながらの慌ただしい買い物に。母も可哀想だが、男の子も可哀想。時間がゆっくりと進むあのドヨ〜ンとした空気を思い、僕はすっかり買い物が苦手になってしまった。
僕がブランド店へ出かけることは、まずない。毎日、手にしているルイ・ヴィトンのバッグとて、表面が擦り切れ耐用年数が終わった七〜八年に一度、買い替えに店に足を運ぶだけ。着る物に至っては、羽田空港で、マネージャーが車を取りに行く間、到着フロアーのユニクロで調達してしまう。