テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! ここ10年ほど、就寝前のストレッチを欠かさないという石原さん。日々のストレッチを支える一枚の織物、それは佐賀で出会った逸品でした。
この十年、就寝前のストレッチは欠かさない
“ポコッ”
体の奥で音がする。周りの人には聞こえないかもしれない。音というより、体の内を伝わる小さな震動。その音が聞こえたら、僕はストレッチを終える。
この10年、僕は就寝前のストレッチを欠かさない。正確に言えば、欠かさぬように極力、努力している。宿泊先のホテルへ到着が深夜になっても、一風呂、浴びたあとにストレッチ。体を少し伸ばせば、優しく深い眠りにつくことができるのだから。
まずは、正座。正座するだけで、僕のように硬い体の人間は、体の内がザワついてくる。ふくらはぎ、ふとももの細胞一つひとつがザワワ、ザワワ。血管を流れる血流の赤血球も白血球もザワワ、ザワワ。痛いようで、痛くない。気持ち良いようで、気持ち良くもない。
正座しながら、首のストレッチ。手順が詳しく分からない時は、とにかくグルグル廻すこと。首なら首をグルグル廻す。腕なら腕をグルグル廻す。経年劣化に負けぬよう可動域をキープすることが大事なのだと以前、どこかの整体師に教授された。
朝の『モーニングショー』(テレビ朝日・ABC系列)で、“アカデミ・ヨシズミ”というコーナーを担当していた。毎週、様々な医療現場を訪ね、首痛、肩こり、腰痛の先生にいろいろと話を伺ってきた。その最大公約数が、体をグルグル廻すことであった。

3年間の取材の中で、数々の体に良い体操を教わったが、全部やっている時間はない。僕は正座して首を廻したら、そのまま真後ろに倒れ込む。体の柔らかな人にとっては何ということのない動作でも、僕にとっては、決死の覚悟だ。
しなりのない体は、背中が倒れると同時に、膝頭がピョコンと上がる。床と接するのはつま先の僅かな部分だけ。そこに下半身の重み総てがかかるのだから、指先から足の甲にかけて激痛が走る。それが、第一関門。
「足の指は、自分の体重で折れたりはしないよ」。整体師の言葉を信じて耐える。
不思議なもので、5分もすれば痛みに慣れてくる。痛みが和らいだところで、足の甲を床につけてグッとお尻の下に引き寄せる。すると、しなりのない体は、お腹がポコンと宙にせり出して、カマボコ型に膨れ上がる。そこで、太ももの表面がはがれるように痛むのが、第二の関門。
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