日経グッデイ

石原良純の「日々是好転!ときどきカラダ予報」

石原良純 自宅のテントに泊まって“野生の勘”を取り戻す

第33回…GWは庭先でアウトドアを満喫

 石原良純

テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。前向きに生きれば、日々是好転! 今年のゴールデンウイークは、子どもの部活・受験で家族旅行に出かけられない石原さん。一年前に衝動買いしたテントを自宅の庭に張り、アウトドア・ナイトを楽しもうとしますが…。

アウトドア初心者、自宅でテント張りにチャレンジ

 なんだか薄ら寒い。僕は布団の中で体を丸めた。まぶたの向こうに光を感じる。どうやら、外は明るくなり始めたようだ。

 日の出前のこの時間が、一日で気温が一番低いのは当たり前。そんなことをぼんやりと考えながら、再び眠りにつこうと思ったら、突然、辺りが騒がしくなった。チュン、チュン、チュン。鳥達が日の出とともに行動を開始したようだ。

 枕元の携帯電話で時間を確認すると、4時半を廻ったところだ。早起きするにせよ、早過ぎる。増してや、今日はオフ日。ここは意地でも、朝寝坊してやらなければ、気が済まない。

 気合を入れて、キッチリとまぶたを閉じる。いやいや、リラックス、リラックス。呼吸を静かに、体の力が抜けてきて、ようやく眠けが寒さに勝てるのだ。さあ、眠りに落ちるその時、今度はバイクの音が頭の上で大きく鳴り響いた。我が家の新聞配達は、4時半であることを知った。

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一年前に衝動買いしてしまったテント(写真上)。娘・舞子の指示に従って組み立てたところ、なんとかテントは完成(写真下)
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 このゴールデンウイークの最大イベントは、庭にテントを張って泊まること。長男・良将は、部活。長女・舞子は、バレエと受験勉強。とても親と旅行に行く暇はないそうだ。ならば、屋外活動を自宅で楽しんでしまおうというワケだ。

 そもそも、テントを買ったのは一年も前のこと。アウトドアライフへの憧れ半分。熊本地震のニュース映像の影響が半分。お父さんたるもの、女房、子供等の前でテキパキとテントの一つも張れなければ、と衝動的にネットショップをクリックしてしまった。

 とはいえ、商品が届くと間もなく梅雨入り。夏になれば、暑いし蚊が多い。秋がようやく深まって庭に蚊がいなくなったと思ったら、木枯らしビュービュー吹きはじめ寒いったらありゃしない。春風が吹いて、ようやく空気が緩んだら花粉の季節。

 つまり、アウトドア初心者にとって、ゴールデンウイークから梅雨入りまでの僅かな期間しか、テント張りに挑戦する機会はないのだ。

五月晴れの下、娘・舞子は日焼けで赤顔に

 一年間、梱包されたまま玄関と階段下に放置されていた厄介者が片付くとあって、奥さんは喜んではくれる。でも、手伝ってはくれない。良将は、寝冷えしたとかで元気がない。舞子だけが、ダンボールの中から次々と飛び出す見慣れぬ部品に興味を持ったのか、珍しく自ら手伝いを名乗り出てくれた。

 小学校6年生の女子は、非力であるが口やかましい。僕が取り扱い説明書の解読に手間どっていると、勝手に僕の部屋からiPadを持ち出して、取説動画をYouTubeから探り出す。フム、フムと一人勝手に頷いて、僕に向かって、あーだ、こーだと指図しはじめた。

 確かに、中学2年の良将と男二人で説明書を斜め読みしていい加減に組み立てるより、上手に、かつ早く組み立てられていく。それでも、試行錯誤を繰り返し、3時間がかりでようやくテントは完成した。

 説明書やビデオが不親切なのか。それとも、アウトドア初心者の僕等の技量が余りにも劣っていたのか。ただ、確かなのは、風の強い日に二人で山でテントを張ろうとしたなら、テントと共に舞子が飛んで行ってしまうこと。

 でも、舞子が本当に不幸に見舞われたのは、二日後のことだった。外ロケの多い僕が赤顔なのは今に始まったことではないが、フト舞子を見れば、彼女の顔も赤顔。五月晴れの下、三時間のテント張りで彼女もすっかり日焼けしてしまった。

 日焼けした芸能人は、松崎しげるさんや梅宮辰夫さんを筆頭に珍しくはない。しかしバレリーナは、色白と相場が決まっている。舞子が“デヘヘ、まずった”と笑えば前歯が白く光る。きっとバレエ教室で叱られるのだろう。

 完成したテントは、思っていたよりかなり大きい。庭いっぱいに広がって、つつじの植え込みを踏みつぶしていた。それでも、四方向に開口部があり風通しは良い。開口部には全て網戸も付いている。暑さ対策も、虫除け対策もぬかりなく、テントは夏でも快適に過ごせるのかもしれない。

 テントが出来上がったら、次は寝袋だ。さっそく寝袋を持ち出して、テントの中でくるまってみる。舞子と二人で転がる様は、いも虫ゴロゴロ。寝袋のチャックを閉めてテントを中から見上げれば、気分はすっかり軽井沢。束の間、東京にいることを忘れてしまう。

自宅の庭先でアウトドア・ナイトをエンジョイ

 となれば、今夜はテントで寝てしまおう。でも、良将は腹痛。奥さんは無視。舞子にまで、付き合えないと呆れられる。いやいや、人は野生味を失ってはいけないのだ。僕はひとり夜の闇へ出かけた。

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寝袋にもぐりこんだ様は、まさに“いも虫”(写真上)。この日の夜は布団を持ち込みテント内で一泊した(写真下)
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 でも、居住性はより快適に確保したい。寝袋で寝なくても、庭なら布団も持ち出せる。

 ただ寝るだけなのも、もったいない。LEDのランタンをつけて、布団の上にあぐらをかいて缶ビールを空ける。あては、さきイカ。テントの夜が人の目にブリリアントと映るかどうかは分からぬが、僕は充分にアウトドア・ナイトをエンジョイした。ただ、玄関の鍵を閉められて、歯みがき出来なかったのがちょっと残念。

 連日、最高気温が26.7℃まで上がった今年のゴールデンウイーク。でも、アウトドアをなめてはいけない。家の自室ならば布団をひっ剥がして眠るところだが、ちゃんと掛け布団と毛布を用意した。寝まきはTシャツにトレーナーの上下、と完全に冬仕様。

 それでも、薄ら寒さに、朝、目が覚めた。

 冷えは地面からやって来る。そして、気温は部屋の中とテントの中では、10℃は違う。夜は寒い。夜は暗い。そんな当たり前のことを、思い出した。

 キリマンジャロ登山で、酸素が薄く苦しいなか、日が登りはじめた時には、どれだけホッとしたことか。東シナ海をヨットで渡る時には、水平線から昇る朝日にどれだけ励まされたことか。僕は、お日さまの有難さを、都会のテントの中で思い出した。

 テントに泊まって野生の勘を取り戻すことをお勧めする。

 でも、一泊だな。

石原良純(いしはら よしずみ)
俳優・気象予報士
石原良純(いしはら よしずみ) 1962年1月15日生まれ。神奈川県逗子市出身。慶応義塾大学経済学部卒。テレビ、舞台、映画など幅広く活躍。趣味はマラソン。自宅から10キロ先の所属事務所まで走って通うことも。