日経グッデイ

石原良純の「日々是好転!ときどきカラダ予報」

三度目の正直! マラソンで「サブ4」の仲間入り?

第18回…酒をやめて頑張った自分を褒めてあげたい

 石原良純

テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! 3月初旬に 「第一回鹿児島マラソン」に参加するため、鹿児島を訪れた石原さん。石原さんはこれまで、4時間を切ったのにコースが186m短かったり、まさかの腹痛で途中棄権するなどと、「サブ4」(フルマラソンで4時間を切るタイムで走る)の仲間入りを果たせないでいました。果たして鹿児島マラソンの結果やいかに…。

「第一回鹿児島マラソン」のため、ここへやって来た

「第一回鹿児島マラソン」に参加するため鹿児島に来た石原さん。宿泊した「城山観光ホテル」からは、鹿児島市街と、褐色の山肌が猛々しい桜島が一望できる
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 桜島が笑っている。

 西郷南洲公の終焉の地である城山の頂に建つ「城山観光ホテル」からは、鹿児島市街が一望できる。そして、市街地の向こう錦江湾を隔てた対岸に、褐色の山肌が猛々しい桜島が聳え立つ。

 山頂に僅かに浮かぶ雲のために噴煙は確認できないが、その巨大な山体を眺めれば、時に鹿児島の街に轟音が轟き、視界を遮るほどの火山灰が降り注ぐこともうなずける。

 桜島を間近に望むこの地にホテルを建てたオーナーは、鹿児島の街と桜島を、イタリアのナポリとベスビオス火山に見たてたのだそうだ。鹿児島市とナポリ市は、姉妹都市の関係を結び、以来、鹿児島は“東洋のナポリ”と呼ばれるようになったのだとか。いかにも昭和なストーリーだが、そんなことにお構いなく、錦江湾越しに桜島を眺める絶景に、誰もが見いってしまう。

 その昔、『太陽にほえろ!』のロケで城山観光ホテルに滞在した叔父の石原裕次郎は、ロケから戻ると赤く夕陽に輝く桜島を肴に、早速、酒を飲み始めたという。夜も遅くなりスタッフが翌日に備えて部屋に戻っても、叔父は独りで飲み続ける。朝、ロケ隊が出発する時間にラウンジを覗くと、まだ飲んでいる。その日の夕刻、ロケ隊に“裕次郎、倒れる”の報が届いたという。詳しく聞けば、何も食べずにブランデーを飲み続け、お腹が空いて倒れたのだとか。裕次郎とブランデーと桜島、ここにも昭和なストーリーがあった。

 鹿児島に来たなら、是非泊まりたいこのホテルの魅力は、まずこの景色。次に、温泉露天風呂。鹿児島市は県庁所在地でありながら温泉の街。市内に数ある銭湯も天然温泉だ。ビジネスホテルにも温泉大浴場が完備されている。でも、どうせ入るなら雄大な桜島をお供に温泉を楽しみたいものだ。朝、昼、晩と時につれ趣を異にする桜島を眺めながら、ゆっくりと柔らかな湯に身をひたすのは至福の時だ。

 そしてもう一つ、僕の密かな楽しみは、朝食バイキングに設置されているソフトクリーム機。食後のデザートのフルーツの上に好きなだけソフトクリームを載せる。業務用ソフトクリーム機の重たいレバーを自分で引いて、思いのほかクリームが飛び出た分だけ、幸せが増すというものだ。

 しかし、今回の滞在はのんびりとそんなことばかり言ってはいられない。僕は3月6日朝8時30分にスタートする、「第一回鹿児島マラソン」に参加するために、ここへやって来たのだから。

最後の1週間は完全にアルコール・オフ

 前夜祭のレセプションには、まだ時間がある。軽くストレッチを兼ね展望台まで散歩に出ようと思ったが止めておいた。どうも空港でタクシーに乗った時から、目がシバシバし始めた。花粉プラス火山灰。ここは大事な試合を明日に控え、大人しくしておいたほうが良いに決まっている。

 午後6時から、ホテルの宴会場で大会委員長の鹿児島市長や鹿児島県知事が列席して賑やかに前夜祭が催された。さすが焼酎の国、鹿児島の宴。皆さん水割りグラスをグイグイと空けられる。テーブルには、焼酎入りのガラスとっくりがゾロゾロと並ぶ。市長と知事は学校の先輩後輩の仲。知事いわく、「市長はいくら酒を飲んでも絶対に倒れない」のだそうだ。

 そんな大賑わいの会場で、僕が手にしていたのは、もちろん100%水入りのグラス。なにしろこの1カ月間というもの、週1の禁酒日を、2日、3日、と増やしてきた。そして最後の1週間は完全にアルコール・オフ。これもすべて明日のマラソンのため。ここで雰囲気に呑まれてアルコールを口にしてしまっては、これまでの努力が水の泡だ。

 大会の成功を祈念して早めの散会となったところで、天文館の夜の街へ繰り出すことなどありえない。トットと部屋に戻った僕は、ルーム・サービスでスパゲティーをオーダーした。

 マラソン最後の10kmで燃料切れにならないように、カーボローディングも僕は実践している。レースの前、月曜から水曜までは糖質ダイエット。米やパンといった主食を摂らない。木曜日に炭水化物解禁。金、土はあえてガツガツと主食を頬張る。マラソン1回で5000kcalともいわれるエネルギーを体内に上手に蓄えておかねばならないからだ。

 だから僕は、マラソン前夜はパスタと決めている。普段通りの食事量にプラスしてパスタ一皿。この炭水化物が糖となり明日のラストスパートに繋がると信じている。

アマチュアランナーは雨が困る。それなのに…

 記録を狙うエリートランナーにとって気になるのは風かもしれないが、僕らアマチュアランナーは雨が困る。走り始めて体が一旦は温まっても、雨に濡れればたちどころに体は冷えてしまう。重たい足を引きずって冷え切った体で3時間も4時間も走る姿を想像するだけで、気持ちが萎える。

 鹿児島マラソン当日の天気は曇り。ところが、気象庁のレーダー画像を眺めれば、西からレーダーエコーが赤や黄色に光る発達した雨雲が近づいて来ているではないか。天気予報の降水確率も70%。朝から昼前にかけては、雷を伴って強く降る時間もあると物騒なことを言っている。

 なにしろ鹿児島と聞けば、気象予報士が連想するのは豪雨の国。梅雨時、台風が接近した時、度々鹿児島県では大きな土砂災害に見舞われる。今回のマラソンコース上にある日豊本線竜ケ水駅、普段は、海沿いの国道から錦江湾越しに桜島を仰ぎ見る風光明媚な場所ではあるが、“竜ケ水”とその名を聞けば、いかに雨が降り、水が出るか想像できる。

『トリハダ(秘)スクープ映像100科ジテン』(3月24日テレビ朝日系放送予定)で司会をする石原さん(写真提供:テレビ朝日)
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 ちょうど先日収録した、僕が司会する『トリハダ(秘)スクープ映像100科ジテン』(3月24日テレビ朝日系放送予定)で、竜ケ水で駅や列車が土石流に流された平成5年8月豪雨を取り上げた。大雨で国道沿いの山脈が次々崩れ、列車も車も立ち往生。少しでも崖から離れようと車外に逃れ、国道の海側の道端に立ち尽くす人達を土石流が襲ったという。番組では絶体絶命の危機の中、奇跡の生還を果たした警察官を中心に物語を構成したが、4名の死者を出す大惨事となった。

 南国の南東斜面で降り出した雨は、ランナーを叩きつける。やがてランナーは錦江湾に流されてしまったりして……。そんな不安が胸に広がるのは、気象予報士の僕だけか。不安いっぱい、期待いっぱい。

3時間55分22秒の自己ベストを達成

 レースは、朝8時30分にスタートした。

 月に200km走って、酒をやめて、スパゲティー食べて、頑張った自分を褒めてあげたい。見事に、3時間57分21秒、スタートラインまでの時間を引いたネット3時間55分22秒の自己ベストを達成した

タイムは3時間57分21秒。スタートラインまでの時間を引いたネット3時間55分22秒の自己ベストを達成(写真提供:鹿児島テレビ)
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 昨年3月の横浜マラソンは、4時間切ってもコースが186m短かった。万全で臨んだ昨年11月の登山マラソンは、まさかの腹痛途中棄権。三度目の正直でやっと僕もサブ4の仲間入りできた

 ふと見上げれば、桜島が笑っていた。

石原良純(いしはら よしずみ)
俳優・気象予報士
石原良純(いしはら よしずみ) 1962年1月15日生まれ。神奈川県逗子市出身。慶応義塾大学経済学部卒。舞台、映画、テレビなど幅広く活躍。趣味はマラソン。自宅から10キロ先の所属事務所まで走って通うことも。