日経グッデイ

石原良純の「日々是好転!ときどきカラダ予報」

熊本城マラソン、無念のドタキャン

第42回…準備不足の僕はエントリーを取り下げた

 石原良純

テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! 2月18日の『熊本城マラソン』にエントリーしていた石原さん。そこに向けてカラダ作りも順調に進めていたのに、直前で無念のエントリー取り下げ。いったい何があったのでしょうか。

連続マラソン完走記録が8年目で途切れる!

 残念、無念。2月18日の『熊本城マラソン』は、エントリーを取り下げることになってしまった。そして、2010-2011シーズンから続いていた、連続マラソン完走の記録も8年目で途切れてしまった。

熊本城マラソンの応援に来ていた“くまモン”と記念写真

 なにしろ、マラソンを完走する体ができあがっていなかった。昨年2月の『姫路城マラソン』をギックリ腰を無理して参加したのがいけなかった。当日は無事完走はできたものの、腰をかばったフォームのせいなのだろう、右足に痛みがずっと残った。

 日常の暮らしには問題ないのだが、いざ走ってみると右足のふくらはぎが気になる。走り出すと右足で地面を蹴っても、思うように体が前へ出ていかない。左右の足のバランスが悪いせいか、スピードも上がらない。と思っているうちに、右足のふくらはぎが鈍く痛みだす。額に汗が浮かんできて、ここからがランナーズ・ハイの境地、“心地良い覚醒感”を味わう前に、足を止めなければならない。

 お日様が輝いて、心地良い風が吹いて、街は絶好のジョギング日和。でも、走り出したら、足が痛くなる。走りたくても、走れない。なんとも、憂鬱な一年を過ごすハメになった。だから、秋の大会はパス。熊本と同じ城下町、『金沢マラソン』か『おかやまマラソン』あたりを疾走してやろうと思っていたのに。

 冬の大会もあきらめかけていた時、年末の忙しさが、僕の右足に幸いした。それまで、痛みが治まったと思って走り出すと、痛みがぶり返す。また治まったと思って、走って、またぶり返す。そんな繰り返しをしていたが、すっぱり走らなかったのが足に良かったようだ。

 約一カ月のブランクの後、正月休みに近くの公園へ駆け出してみると、走っても足がガタつかない。地面を蹴ればちゃんと体が前に出る。復調の兆しあり。僕は2月の熊本城に照準を定めた。

酒を押さえて、体重を落としていく

 マラソン前、8週間×50kmが我がマラソンの師、上岡龍太郎さんの教え。だが、今回はもう準備期間が足りない。ならば、走り足りない分は、体重を落とすほかない。素人ランナーは体重1キロ減につき、タイムが5分速くなると言われている。

 まずは、自分の体重を確かめるところから始まる。

 この10カ月間、ろくに走れないから恐くて体重計に乗れなかった。意を決してジョギング終わりに風呂に入って、水も飲まずに体重計に乗る。少しでも軽くみせるためにセコイと思われても、僕はちっとも恥ずかしくない。風呂上がりのスッキリした時が、自分の標準体重と決めているから。

 79.0キロ。ウム、80の大台には達していないが、これはまずい。なるほど鏡に映る顔は、アゴの周りが少し緩んで見える。ベルトの穴も増えたかも。お腹をつまめば余り肉がムニュムニュ動く。

 僕のベスト体重は72キロ。と言いたいが、この十数年来、そんな数字は見たことがない。それでも、マラソン前には74キロ台に体重は落としている。

 体重を落とすには、食べなければいいに決まっている。僕の場合は酒を飲むと、食事を沢山食べるから、酒を飲まなければいい。

 僕のスケジュール表には、酒を飲まなかった日には★マークが記入される。マラソン直前の週は禁酒。ズラリと★マークが並ぶ。2週間前は、★マークが3つ。3週間前と4週間前は、★マークが2つ。4週間の星を足せば、月の半分は酒を飲まない勘定だ。

『熊本城マラソン』当日のスタート地点。ここからランナーを見送る

 今回も74キロを目指して5キロの減量作戦を敢行した。体が軽くなれば、走り込みのペースも徐々に上がってくる。

 駒沢オリンピック公園のジョギングコースは、1周約2.14km。20周でちょうどフルマラソンとなる。僕は普段、ここを5周走ってクォーターマラソンのタイムをとる。

 正月休みは息を切らして走ってみても、タイムは62・3分。例年ならばマラソン前は、5周を52・3分で走っていた。これでは到底、熊本でのサブ4は望めない。

 それでも3週間、酒量を減らし走り込むと、徐々に効果が現れる。体重は2.5キロ減。5周のタイムも56・7分まで縮まった。ここからが正念場……というところで、僕は風邪をひいた。

ここからが正念場なのに…調子に乗って走り過ぎた

 タイムが上がって、久々に走るのが楽しくなってきたところ、寒空の下、調子に乗って走り過ぎた。インナーシャツが汗でグッシャリ濡れた体に寒風が吹き抜けた。家に帰って風呂を浴びて絶好調と思いきや、ありゃありゃ、喉の奥に小さな痛み。“おいおい”と思っているうちにセキが出て、体がだるくなった。エネルギーを使い切るまで体を動かして、すっかり免疫力を低下させてしまったようだ。“子供ではあるまいし”と女房が呆れる前に、自分自身で呆れてしまった。

 というわけで、『熊本城マラソン』は欠場。なにしろフルマラソンと富士登山は、アスリートならぬ凡人にとっては究極の遊び。誰でもやろうと思えば参加できるが、ナメてかかればドエライ目にあう。下手をすれば命を落とすことだってある。準備不足の僕がエントリーを取り下げるというのは、当たり前の話だ。

 『熊本城マラソン』当日は、スタートセレモニーだけ参加することになった。スタート地点で、フルマラソンを走る1万2000人とファンランの参加者1500人を見送った。

 手を振る僕を見つけたランナーから、「今日の天気は」と声が掛かる。僕は晴れ渡る青空を指差して、「見りゃ分かるだろ」と叫び返すのがお約束。

 大会ホームページを見たのだろう、「良純、なんで走らないんだよ」と大きな声も聞こえてくる。そんな時は、「体調不良だよ、僕だって走りたいのだ」と逆切れするしかない。

 日も高くなり、陽射しのぬくもりも感じられるようになってきても、ランナーが走り去ったスタートゲートは、寂しいものだ。やっぱり、マラソン大会の主役は、必死に走るランナー一人ひとりなのだ。

 しょうがない、隣で一緒に手を振っていた“くまモン”と記念写真を撮って帰るとしよう。そして、帰りの飛行機では、今も走っている皆さんには悪いがシャンパンを飲んでしまおう。

 来年の“熊本”はどうしよう。2年続けてドタキャンしたら、“走る走るサギ”と言われてしまうかも。

熊本から東京に戻る飛行機では、シャンパンを
石原良純(いしはら よしずみ)
俳優・気象予報士
石原良純(いしはら よしずみ) 1962年1月15日生まれ。神奈川県逗子市出身。慶応義塾大学経済学部卒。テレビ、舞台、映画など幅広く活躍。趣味はマラソン。自宅から10キロ先の所属事務所まで走って通うことも。