テレビ界きっての多趣味人で、博識の石原良純さん。50代で人生により磨きをかける日々の中で感じている、カラダのこと、天気のこと、そしてニッポンのこと。何事も前向きに生きれば、日々是好転! ロケで下北半島を訪れた良純さんを待ち受けていたのは、ワカメ、水ダコ、ヒラメ、ホタテ、アンコウといった絶品の海の幸。なかでも良純さんが気に入ったのは? 一方、昨年から続けているジョギングでも、いろいろ発見があったようで…。
緊急事態宣言の直前、新年早々にロケに出た。寒風吹き荒ぶ真冬の青森で美味しい物を食べ尽くす、本州最北端の下北半島へ取材ロケ。
下北半島と聞けば、まず思い起こすのが恐山。地獄を思わす薄気味悪い池の畔で、風も吹かないのになぜか風車がカラカラと回る。それは、いつか『アサヒカメラ』で見た風景だ。
もう一つは、斗南(となみ)藩の足跡。戊辰戦争に敗れた会津藩士は、極寒の地に追いやられた。不屈の精神をもってしても過酷な自然には勝てず、屈強な戦士達も彼の地で散り散りになってしまった。
いずれにせよ、僕が抱く下北のイメージに、グルメが存在する余地はなかった。ところが、然に非ず(さにあらず)。下北半島をゆっくり訪ねて驚いた。そこは正しく、海の幸の宝庫だった。
大間のマグロ以外にも、絶品グルメがいろいろ
三十数年前、初めて訪れた下北の名物はイカだった。津軽海峡に並ぶイカ釣り船の漁火の灯りを遠く眺めた覚えがある。
その後、すぐに脚光を浴びたのが大間のマグロ。北の海の恵みを体じゅうに貯えたクロマグロの味以上に、あたかも博打のようなマグロ漁に賭ける大間の漁師の生き様が、テレビを通して広くお茶の間の注目を集めるようになった。
マグロ漁の取材で大間に足を運ぶと、漁協の事務所に、松方弘樹さんから届いた一升瓶が並んでいたのも懐かしい思い出だ。
世界中の海でマグロを追った松方さんは当然、大間にも現れた。漁場をお借りする漁師さんに仁義を切る。それも海の男のロマンの一端だったのだろう。「いや、なかなかマグロはあがりませんよ」と漁師のおじさん達は真っ黒い顔で笑っていた。
太平洋、津軽海峡、陸奥湾と三方を、それぞれ趣を異にする三つの海に囲まれた下北半島には様々な海の幸が存在する。

まず、足元の磯場には岩のり、ワカメ。サッと湯通ししただけで食べるワカメのシャブシャブは磯の香り満載で絶品。海藻を食べるアワビが現れれば、アワビを食すタコも現れる。北の海のタコは、僕のなじみの湘南のタコとはスケールが違う。
夏の夕暮れ時、湘南の漁師さんに頂いたタコを、身を柔らかくするためにメンコのようにぺったんぺったん道路に叩きつけたものだ。ところが、青森の水ダコとなると持ち上げるのがやっと。道に叩きつけるどころか、何かの拍子にこちらがギックリ腰にもなりかねない。
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